稔さんは結婚を機に福岡に戻り、97年から店を引き継ぎました。稔さんにも大手のカフェチェーンで働く息子(26)がいます。
「後継者難で苦労する喫茶店は多いが、『伊藤さんの店は安泰やね』とよく言われます」。康男さんがとびきりの笑顔で話してくれました。
人気のホットプレスサンド(700円)
福岡市早良区西新5-1-35
[営]8:00~21:00 29席
[休]毎週木曜
☎︎092・823・0325
■琥珀館
愛煙家たちの「楽園」喫茶 お奨めはリゾット風の「ライスカレー」
名物のライスカレーを運ぶ坂野輝子さん
多祇園山笠で知られる櫛田神社の近くに愛煙家たちの「楽園」とも呼べる喫茶店があります。「琥珀(こはく)館」。入り口に「喫煙可能店」の看板が掲げられ、20歳未満と子連れの人は入店できません。
福岡市でも禁煙区域が拡大し、愛煙家たちは肩身の狭い思い。しかし、ここでは堂々とタバコが吸えるため、昼休みには、愛煙家のサラリーマンが続々と集まってきます。
店主は坂野輝子さん(75)。9年前に他界した夫の明彦さんは元専売公社の職員でヘビースモーカーでした。1983年、別の人がやっていた店を坂野夫妻が引き継ぎ「琥珀館」と名付けました。
琥珀色の店内には漫画本やスポーツ新聞が置いてあり、昔ながらの喫茶店です。メニューはカレー、ハヤシ、ピラフ、サンドイッチなど80種を超えます。お薦めはライスカレー(980円)。濃厚なソースとピラフをまぜたリゾット風のカレーでトッピングの生卵との愛称は抜群です。愛煙家でなくても、食べたくなります。
カウンターの各席に灰皿がある
福岡市博多区上川端町1-6
[営]平日 11:00~19:00、土・祝11:00~18:00 45席
[休]毎週日曜
☎︎092・281・7578
■珈琲舎のだ
「馬蹄形のカウンター」が自慢 お客さんと店員の距離感大切に
馬蹄形のカウンターが特徴的
店に入ると、馬蹄(ばてい)形のカウンターが目に入ります。15人が座れて表面にお客さんがくつろげるよう肘おきのくぼみが付いています。座ると、サイホンでコーヒーを入れる一連の作業を目の前で見ることができ、心地よい香りが店内に広がっています。
「お客さまと店員の適度な距離感が大切。親しさは大事ですが、べったりもダメ。ホテルマンのような接客を心がけています」と赤星敬一社長(46)。
喫茶業は赤星さんの義父・野田光彦会長が57年前に始めました。赤星さんは建設会社の現場監督をしていました。結婚当初「(喫茶店は)やりません」と伝えていましたが、15年前「やってくれないのなら、のれんを下ろす」と義父に言われて転身を決意しました。
赤星さんは系列店で菓子作りを必死に学びました。純喫茶の本店だけでは「将来が厳しい」として、天神のソラリアプラザや博多駅の阪急百貨店にカフェを出店し、女性客の人気を集めています。元現場監督の社長は経営者としての才能を存分に発揮しています。