2024年度がスタートしました。この春、長年の勤めを終えて、定年を迎えた皆さん、お疲れ様でした。皆さんはこれから始まる「セカンドライフ」をどう過ごそうかと考えておられると思います。ところで「人生の最大の買い物」といわれる住宅のローンはどうしていますか?支払いを終えた方、これからも支払いが続く方もおられると思います。今月号は、定年退職を迎えた方を対象に、住宅ローンとどう向き合えばよいのか、一緒に考えてみましょう。
「期間短縮型」は、繰り上げ返済額の分、返済回数を減らすもので、毎月の返済額は変わりません。「返済額軽減型」は、繰り上げ返済額の分、毎月の返済額を減らすもので、返済期間は変わりません。平たく言うと、早く返して楽になるようにするか、返済額を減らして月々の家計を楽にするかです。利息の軽減効果が高いのは、期間短縮型ですが、どちらが合っているかは、家庭の事情による部分があり、一概に言えません。
●返済期間を短くする
<期間短縮型>毎月の返済額はそのままで、返済期間が短縮される
●毎月の返済額を減らす
<返済額軽減型>返済期間はそのままで、毎回の返済額が少なくなる
一括返済 メリットとデメリットをしっかり考えよう!
オーエンの主人公・財成高利はこの春、定年を迎えました。35歳の時に組んだ住宅ローンがあと10年残っています。残高は約1,000万円。定年後は同じ会社で再雇用として働く予定ですが、収入は大幅に減りそうです。このため、高利は退職金1,500万円の中から1,000万円を住宅ローンの一括返済に充てようかと考えています。果たして、一括返済をやるべきか、高利は安心と一緒に白浜仁子FPに相談に行きました。
ズバリお聞きします。定年を機に退職金で住宅ローンを一括返済しようと思いますが、どうでしょうか?
お疲れさまでした。なぜ、一括返済をお考えですか?
定年後は、給料が半分くらいに減ります。将来、住宅ローンの金利も上がりそうだし、なるべく負債を減らしたいからです。
お気持ち、よく分かります。まずは一括返済のメリットとデメリットを考えてみましょう。
■白浜FPのアドバイス 1
住宅ローンの一括返済(繰り上げ返済)には、以下のようなメリットとデメリットが考えられます。
メリット
●毎月の返済がなくなる/減る
●支払う予定だった利息分が軽減される
デメリット
●手元資金が減る
●団体信用生命保険がなくなる/減る
繰り上げ返済の最大のメリットは、支払う予定だった利息分を軽減できることです。
一例を下の表にまとめてみました。
●繰上げ返済(全額返済)の利息軽減効果の例
住宅ローンの条件:■借入額3,000万円 ■借入期間35年間 ■固定金利1.5% ■元利均等返済
住宅ローンの残債が多いときほど、退職金で一括返済したときの利息軽減効果は大きくなります。適用金利が高ければ高いほど、繰り上げ返済による利息軽減効果も大きくなります。一方、すでに完済まで1~2年などと残債が少ない場合、金利が低い場合は軽減される利息金額は小さくなります。
デメリットですが、住宅ローンには基本的に「団体信用生命保険(=団信)」という生命保険が付いています。団信は契約者が亡くなると住宅ローンの残債がなくなる生命保険。なので、住宅ローンの返済中は住宅ローンの残債と同額の死亡保障を持っていることになります。繰り上げ返済を行うと、残債が減った分、死亡保障も減額となります。一括返済をすれば、団信も消滅します。
一括返済 お勧めできないケースも
住宅ローンを一括返済すれば、毎月の返済額は減るけど、手元資金が少なくなる。迷いますね。
一括返済をお勧めするのは、手元資金や資産に余裕がある場合です。財成家には、独立していないお子さんはおられますか?
一番下の子は大学生です。
学費などがこれからも必要なら、手元資金に余裕を持っておくことも大切です。
その通りですね。
住宅ローンの一括返済をお勧めしないケースを5つまとめてみました。
■住宅ローンの一括返済をお勧めしないケース
①生活資金が少ない
②子どもの進学や車の買い換えなどを控えている
③貯金が減るのが嫌
④安い金利で借りている
⑤返済期間が残り少ない
一括返済より、手元資金を運用に回す方法も
■白浜FPのアドバイス 2
今年から始まった新NISAを使って、手元資金を運用に回す方法も考えられます。
例えば、年率1%の住宅ローンで1,000万円を返す場合、そのお金を返済せず、投資信託の積み立てなどの運用に回すことで、仮に3%の利回りを確保できれば、住宅ローンの返済にも余裕が生まれます。もちろん、投資のリスクをきちんと理解した上で考えましょう。
●1,000万円の住宅ローンを年率1%で返す場合
くわしくは、お近くの福岡銀行の窓口へお気軽にお尋ねください。
2024年6月号のテーマは「認知症と介護に備えて」です。
イラスト まき りえこ
福岡市在住の漫画家・コミックエッセイスト
近著に「子どもをネットにさらすのは罪ですか?」
白浜 仁子(しらはま ともこ)
fpフェアリンク株式会社代表取締役
福岡市中央区今泉2丁目1-35 アプリーレ今泉703
TEL 092-753-9828