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長谷川法世のはかた宣言41・赤穂義士

長谷川法世のはかた宣言41・赤穂義士


12月といえば昔は忠臣蔵映画の花盛りだったなあ。
赤穂義士のお墓は東京の高輪泉岳寺が有名だ。しかし明治24年、義士のお墓は荒れていたのだという。ん?赤穂義士は元禄14年の事件当時から庶民に人気があったんじゃなかったっけ。浄瑠璃「仮名手本忠臣蔵」は歌舞伎にもなって人気演目だったし。

江戸時代は事実どおりに芝居をつくるのは御法度だった。忠臣蔵は時代を太平記 *1の室町時代にうつし、登場人物も吉良上野介=高師直、浅野長矩=塩冶判官、大石内蔵助=大星由良之介などと変えている。

明治の御一新で徳川の世がおわると、新政府は芝居を史実第一主義でつくるよう指導した。これを「芝居御諭 *2」といった。江戸時代と180度逆の方針なもんだから、梨園も観客たちもまったく困惑してしまった。
そこに、ご存知川上音二郎が新時代を写実的な新演劇に仕立てて登場、超新星爆発的に衆目を集めた。

さらに神仏分離令と廃仏毀釈騒動で、泉岳寺をふくめ全国のお寺が元気をなくした。
武士もいなくなって武士道もすっかり廃れた。
少々乱暴な歴史のダイジェストだが、赤穂義士のお墓が荒れていたというのはそうした時代背景があっての事だった。

それが音さんの寄進できれいになったのだ。

音さんは明治24年2月に堺で川上一座を旗揚げし、わずか4か月後には江戸三座 *3の一つ中村座に登場、大喝采を浴びた。
演目は「板垣君遭難実記」「経国美談」「佐賀暴動記」などなど。そしてオッペケペー節。

音さんは中村座で成功すると、大好きな赤穂義士の墓参りをした。その荒れたのを見て泉岳寺に寄進した。
寄進は終生つづいた。四十七士の墓とは別に吉良上野介の首洗い井戸がある。
石囲いに「川上音二郎建之」と刻んである。泉岳寺だけでなく金百円を東京府庁を通じ貧者に寄付した。
大入りのほどがわかる。

明治政府は江戸時代的な忠義は仇討禁止令などで抑えたものの、新国家への忠誠は必要だった。
徴兵軍隊の能力向上のためにも、庶民に馴染みのある武士道は有効だった。

音さんが米・英・1900年パリ万博で「腹切り」を演じたのは、明治32年から33年にかけてのこと。
新渡戸稲造 *4さんが、英文評論「武士道」を著しフィラデルフィアで出版したのが、なんとおなじ32年・33年という。
これ、明治政府のグランドデザインによるものではなかったろうか。

第二次大戦後、GHQ *5はチャンバラ時代劇を禁止した。
武士道の忠義や仇討ち賛美がアメリカへの敵対心を起こすから、というのが理由だ。
講和条約締結でようやく禁止解除となり、忠臣蔵映画も続々制作された。子供の私は中洲でそうした映画を見て育ったのだった。

*1)太平記…南北朝時代約五十年間の軍記物語。バサラ大名高師直は横恋慕した塩冶判官の妻に恋文を出す。
それは「徒然草」の兼好法師が代筆したと書かれている。

*2)芝居御諭…明治5年東京府庁は(江戸)三座太夫元および作者三名を呼んで「この頃貴人及び外国人もおいおい見物に相成候については
淫奔(いたづらごと)の媒(なかだち)となり親子相対して見るに忍びざる等のことを禁じ、
全く教えの一端ともなるべき筋を取り仕組むべく申候」。
ほかに勧善懲悪・史実第一主義・敬神愛国について御諭があった。

*3)江戸三座…中村座・市村座・森田(守田)座。
振袖火事ともいわれる明暦の大火(1657)を機に、常設大歌舞伎は江戸四座に限定。
山村座は絵島生島事件で廃絶し幕末まで三座のみとなった。

*4)新渡戸稲造…元盛岡藩。
夏目漱石の項でかいた「佐幕派」。
平和主義クエーカー教徒の新渡戸は戦うための武士の道を騎士道になぞらえて欧米に伝えた。
元佐幕派の新渡戸にとって著作「武士道」は登用された新政府に忠誠を示す踏み絵であったのかもしれない。
1900年パリ万博審査員。

*5)GHQ…連合国総司令部。
日本占領軍の司令部。1945~52年設置。

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