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長谷川法世のはかた宣言94・てのごい

長谷川法世のはかた宣言94・てのごい


 宣教師のルイス・フロイスは戦国時代に来日した。そして信長や秀吉のことなんかを著書『日本史』にくわしく書いた。秀吉の博多町割りに同席※1したことも書いている。フロイスは日本史のほかに『日欧文化比較(にちおうぶんかひかく)』という冊子を残した。日本とヨーロッパの風習の違いを書き出したものだ。前にも書いた「バンコ」が一か所でている。

 日欧文化比較の岩波文庫版『ヨーロッパ文化と日本文化』(岡田章男訳注)を見ると、東西の文化の違いが608項目あって、バンコは第5章2にでている。

「われわれの〔教会〕には高い合唱所があり、人々の坐る椅子(バンコ)または腰掛(カデイラ)がある」そのあとに比較して、日本の僧侶は祭壇の前で畳に座ると記している。フロイスが自分のことばとして書いているバンコが、434年後の令和元年の博多山笠でも、「お~い若手、ばんこば持って来ちゃりやい」などと使われるだろうことを考えると、感慨深くもあり愉快でもある。

 山笠といえば、毎年、流(ながれ)ごと町ごとに新しい意匠の「手拭」を染める。最近、世間では「和タオル」などと珍妙なことばも使われたりするようだ。14章46には、「われわれの間では顔を拭くのに使うタオルと、足を奇麗にするためのタオルとは異なる。日本人は体を洗う時に、同じタオルをすべてに使う」、とタオルの使い方の違いを書いている。いまではフェイスタオルとボディータオルを区別するほうが主流だろう。

 ところで、11章18「われわれは薄いタオルで顔を拭う。彼らはワザトvazato(原文ママ)非常に粗い粗布(リテイロ)または粗麻(トメント)で拭う」の傍注に訳者は、〈帨(てのごい)(手巾、手拭)のことで、『日葡辞書(にっぽじしょ)※2』テノゴイ=顔や手を清めるための小タオル〉と書いている。

 「てのごい」とはまいった。山笠で「手拭」は「てのごい」とよんで、博多弁と思っていた。標準語だったんだ。この機会にてのごいを初めて辞書※3でひいた。「てのごい=てぬぐい。栄華物語※4(若枝)――して顔隠したる心ちするに」と、平安時代から使われていたそうな。これまで方言と思って辞書を見なかった。うかつだった。

 『江戸語辞典※5』には「てぬぐいの訛り。〈遊子方言(ゆうしほうげん)〉明和:――をちょと※6(ママ)熱い湯でしぼってください」とある。出典の遊子方言は明和七年(一七七〇)に出版された洒落本(しゃ れぼん)のはじめだそうだ。

 いま、東京の祭りでは「てのごい」というんだろうか?

※1)秀吉の博多町割りに同席…51回「フロイスの町割」参照。『はかた宣言』48・49・50回も読んでください。
※2)日葡辞書…来日したイエズス会士たちがつくった日本語・ポルトガル語の辞書。総語数三万二二九三。
※3)辞書…広辞苑。ほかにデジタル大辞泉「―をはちまきにして。読・⇨八犬伝・九」。言海(M二二)「一幅の綿布ヲ鯨尺三尺ニ切リタルモノ。手、顔ヲ洗ヒタル後ヲ拭ヒ、或ハ浴(ゆあみ)ニモ用ヰル。テノゴヒ。…」。大辞典(S一一)「一幅を三尺ほどに裁ちたる木綿の布。手、體などを脱ぐふに用ふ。昔は寸尺一定せず、三尺手拭、四尺手拭、五尺手拭など呼びたり。てのごひ。たなごひ。たのごひ」
※4)栄華物語…栄花物語・世継物語とも。藤原道長の栄華を主とした平安時代の歴史物語40巻。正編30巻は赤染衛門作者説が有力。
※5)江戸語辞典…大久保忠国・木下和子編/東京堂出版
※6)ちょと…この文を読んで小津安二郎監督『浮草』の若尾文子の電報「チョットソコマデキテクタサイ」を思い出した。あ、チョットは無いかも。

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