サザンカの庭
コロナ禍のために、在宅勤務の時間が増えた。おかげで、原稿を書くなど本業をしていないと、カミさんから暇さえあれば家事を手伝うように言われる。その中でも一番労力を使うのは、庭掃除だ。
8年前に亡くなったが、長く義母と暮らした。義母は〝過激な〟片付け魔で、とにかくきれい好きだった。婿である私には遠慮があったのか自室を散らかしていても何も言わなかったが、3人の息子たちには容赦なかった。3人とも思春期に秘密にしたいものを隠していたはずだが、室内を勝手に模様変えを何度もされて息子たちはその度に激昂した。「おやじから注意してくれよ!」と、その度に息子たちから懇願されたが、私は「義理の仲だし…」とうやむやにしていたが本当は心の中で感謝していた。
さて、義母がなくなって我が家で一番変わったのは庭だった。こまめに義母が手入れしてくれたおかげで、すっきりとした庭だったが亡くなって以来、随分と荒れた。年に何回かはシルバー人材センターにお願いして手入れをしていたが日頃の手入れが不可欠だと思い知った。庭の手入れは、在宅時間が長い私の役割となった。
盛夏にうっそうとしげっていた雑草は、寒い時期になると枯れているので抜きやすくなる。枯葉も義母の使い込んだ松葉かきでなんとかなる。ただ、毎日労力を費やすのがサザンカの生垣だ。真冬の寒風が吹き荒ぶ中、見事な紅の花を咲かせてくれありがたいのだが、盛りを過ぎると葉と花びらを一枚一枚落とすのである。それも毎日。
敷地内なら「時間があったら片付けよう」と思えるのだが、生垣が面した道路にドンドンあの紅い花びらと葉を散らしていくので、庭掃除と道路清掃が日課となった。強風が吹いた翌日は、ご近所も掃かないと申し訳ないほどに散って、しかも目立つ。
毎朝、この作業を繰り返すうちに演歌のスタンダードナンバーとも言える「さざんかの宿」を口ずさむようになり、フルコーラスで歌い込んでやろう! とユーチューブで聞いてみた。すると、驚くような発見があった。歌詞は、心中をする目前の男女の気持ちを表現した悲しい歌だと分かった。もう一つ、サザンカとそっくりなツバキとの違いを実は知らなかった。掃除をするうちに興味がわき調べてみた。サザンカは花びらが一枚一枚落ちていくが、ツバキは花ごとポトリと落ちる。庭掃除には、学べることが多々あった。
文・写真 岡ちゃん(岡田雄希)
元西日本新聞記者。スポーツ取材などを経験し、現在ブログやユーチューブなどに趣味や遊びを投稿し人生をエンジョイするぐらんざ世代。