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世は万華鏡18・三波春夫がいた時代

世は万華鏡18・三波春夫がいた時代


三波春夫がいた時代

中学生だった昭和30年代末、「テイチクアワー」というラジオ番組を毎週聴いていた。石原裕次郎らテイチク専属の歌番組だったが、お目当ては裕次郎ではなく三波春夫だった。

翌日、学校で「三波春夫のこんな曲が流れた」と級友に話すとほとんど変人扱い。そりゃそうだろう。ビートルズが颯爽とエレキをひいているのに、「小皿叩いてチャンチキおけさ」を歌う中学生がいるかよ。

三波春夫の歌のどこに魅かれたのだろうか。半世紀前の心性は説明できないと思っていた。しかし、数年前、偶然目にしたNHK総合で、作家の森村誠一が三波春夫のファンで、その「明るさ」に励まされたと語っているのを聞いて膝を打ったのだった。

「彼の明るさは天性のもの。遺伝子そのものが明るい。戦場や抑留先のシベリアで多くの戦友の命を救ったと思う」と森村は熱く語っていた。

三波春夫がデビューした昭和32年頃、森村はホテルマンとして煩悶の中にいた。ある年の大晦日、アパート自室のテレビには紅白歌合戦が流れていた。

「紅白歌合戦というのは、家族団欒の中で見るもので、独りで見るものではないとしみじみ思いました。でも、三波春夫の歌だけは独りで聴いてもわびしくなく、楽しめたのです」

森村は「三波春夫のこの一曲は」と問われて、迷いながらも「チャンチキおけさ」を挙げていた。

私の一曲は「一本刀土俵入り」である。この歌で私は作者の長谷川伸を知った。『瞼の母』『関の弥太っぺ』の股旅ものが有名だが、『相楽総三とその同志』『日本敵討ち異相』といった作品もあり、その底には見捨てられた者の悲哀と意気地が一貫して流れている。

少年時代、「一本刀土俵入り」を聴かなければ、長谷川伸の本を手にすることもなかっただろう。その意味で、三波春夫の歌のいくつかは大げさではなく私の精神史を形成してくれたのである。

早や師走。紅白歌合戦ももうすぐ。今どき、この番組を心待ちにしている人はそう多くない。「紅白は家族団欒の中で見るもの」という森村の言葉に従えば、家族のかたちが変容し、「おひとり様」が急増する今日、紅白歌合戦はその歴史的役割を終えたとも言える。

昭和のあの時代、森村の中に、そして私の中に、三波春夫という歌い手が確かにいた。紅白歌合戦はいずれエンディングが来るかもしれないが、そこで歌われた「あの一曲」を忘れることは永遠にないだろう。
(ジャーナリスト。元西日本新聞記者)



馬場周一郎=文
幸尾螢水=イラスト

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