本サイトはプロモーションが含まれています。

長谷川法世のはかた宣言33・坊っちゃん

長谷川法世のはかた宣言33・坊っちゃん


「当人がもとの通りでいいというのに延岡下くんだりまで落ちさせるとはどういう了見だろう。太宰権帥だざいごんのそつでさえ博多近辺で落ちついたものだ*1」

夏目漱石の「坊っちゃん」。うらなり先生が赤シャツの策略で宮崎に転勤するのを知って坊っちゃんが憤慨する場面。「博多」が出ている。ほかでは「赤手拭*2」も出ていて、山笠の手拭ではないけどうれしい。「愚迂多良童子ぐうたらどうじ*3」ってのもある。川上音二郎より3歳年下の漱石先生、自由童子をもじったかも。いやはや、なんでも博多中心で。

「商人が頭ばかり下げて、狡い事をやめない*4」。博多は商人の町だよ、漱石さんたら商人を馬鹿にしてる。「野蛮なところだ。大森くらいな漁村だ、馬鹿にしてらあ*5」とは、四国に到着した坊っちゃんの感想。貝塚の大森も、四国の中学生のことも、「延岡下くんだり」も地方見下し江戸目線・中央目線だ。ややや、大漱石批判になってらあ。

ま、封建的な時代の作品だからな。天ハ人ノ上ニ人ヲツクラズと平等を説いた福沢諭吉さんだって、「福翁自伝」で士族以下は見下しているし。昔の話だし。

いや、リニアモーターカーの実験線が宮崎から山梨へ移設されたのは昭和62年。「鶏小屋と豚小屋の間を走るのは格調が低い*6」という中央目線の理由だった。

坊っちゃんの初読は高校のとき。その視点が気になって漱石さんを読み進めなかった。映画なんかの江戸東京目線も気になりはじめていた。東京が東京ばっかり発信するなら博多が博多を発信してもいいだろうって、それが「博多っ子純情」となり、いまも「はかた宣言」。これはこれ、博多以外みんな見下しという危うさもあり、自戒自戒。

実は、江戸生れの漱石さん、東大教授を辞め小説家になったのは「藩閥」がいやでということらしく、博士号も蹴ったとか。江戸の町名主まちなぬしだった漱石さんの父親は、維新後は警吏になっていたのが明治17年の官吏非職条令で失職。学生だった漱石さんは苦労したんだとか。

平岡敏夫「佐幕派の文学 漱石の気骨から詩篇まで」(出版社/おうふう)で知って、それで坊っちゃんを再読。漱石さんちだけでなく、維新政府に雇用された旧幕吏も多く結局はリストラ。日本近代文学はそうした窮乏の佐幕派から生れたんだそうだ。

北村透谷、山路愛山、尾崎紅葉、幸田露伴、樋口一葉、国木田独歩、東海散士*7、石川啄木などが佐幕派なんだそうな。

「立身出世」の「出世」を望めない人のなかに、「立身」というか「自己実現」を文学でという人があった、ということなのかな。

*1坊っちゃん…岩波文庫第77刷改版97頁(以下同書)、解説平岡敏夫。初出は1906年(明39)「ホトトギス」。
*2赤手拭…34頁
*3愚迂多良童子…116頁。かつて酒呑童子などの英雄譚、また四書童子訓、和俗童子訓(貝原益軒)など少年向け教育書があった。自由童子という大衆に身近な名乗りは民権啓蒙のためだろう。また漱石の俳号は愚陀佛。
*4商人が…115頁
*5野蛮な…118頁
*6リニア…Wikipedia 「リニア実験線」140310
*7東海散士…本名柴四朗。会津白虎隊の生き残り。渡米後政治小説「佳人之奇遇」を発表、のち政治家。弟は柴五郎。「ある明治人の記録—会津人柴五郎の遺書」(石光真人編、中公新書)は涙と笑いと感動の、明治維新前後の佐幕派を知る好著。

【お知らせ】今回から文体を変えました。よろしく。

関連するキーワード


長谷川法世のはかた宣言

最新の投稿


50代のアイメイク完全ガイド|老け顔に見えないメイクのコツと厳選アイテム7選[2025年版]

50代のアイメイク完全ガイド|老け顔に見えないメイクのコツと厳選アイテム7選[2025年版]

50代になると、まぶたのたるみ・くすみ・シワなど、目元の変化の悩みが増えてきがち。「若い頃と同じアイメイクをしていたら、かえって老けて見える…」そんなお悩みを抱えていませんか? 実は50代のアイメイクには、年齢に合わせたやり方とアイテム選びが重要です。間違ったメイク方法では、目元が重たく見えたり、表情が暗く見えてしまう原因にも。本記事では、「50代でも老け顔に見せない」ためのアイメイクのコツをわかりやすく解説しつつ、アイブロウ・アイシャドウ・アイライナーなど、50代におすすめの厳選アイテムを紹介します。正しいテクニックとアイテム選びで、若々しく上品な印象の目元を手に入れましょう。


50代女性におすすめのシャンプー11選 髪の悩みに合わせたエイジングケア商品

50代女性におすすめのシャンプー11選 髪の悩みに合わせたエイジングケア商品

50代女性の髪の悩みを解決に導くシャンプー選びをご提案します。年齢とともに変化する髪質や頭皮環境にマッチした、50代に最適なシャンプーの選び方とおすすめ商品をご紹介。女性特有の髪のパサつき、ボリューム不足、白髪ケアなどの悩みに着目し、保湿力と栄養補給に優れたヘアケア製品を厳選しました。50代女性のためのシャンプー選びのポイントも詳しく解説していますので、あなたの髪質に合った美容成分配合のシャンプーを見つけて、健やかで美しい髪を取り戻しましょう。


50代におすすめのオールインワンジェル12選 肌悩みに合わせた上質スキンケアを

50代におすすめのオールインワンジェル12選 肌悩みに合わせた上質スキンケアを

年齢を重ねるにつれて増えるのが肌の悩み。「もっと手軽にケアしたい」「たくさんの化粧品を使うのが面倒」と思うことはありませんか?そんな50代女性にこそ、オールインワンジェルがおすすめです。50代の肌は、乾燥やハリ不足、くすみといった悩みが複合的に現れてきがちです。 しかし、オールインワンジェルなら1つで化粧水、乳液、美容液などの役割をこなすため、複数のアイテムを揃える必要がありません。時間もお金も節約しながら、効率的に本格的なスキンケアができます。 この記事では、50代におすすめのオールインワンジェルを厳選してご紹介。毎日のお手入れにオールインワンジェルを取り入れて、自信あふれる健やかな肌を目指しましょう。


第十九回博多・天神落語まつり 開催決定!

第十九回博多・天神落語まつり 開催決定!

福岡の秋は、これがないと始まらない! 「六代目三遊亭円楽名誉プロデュース 博多・天神落語まつり」の開催が今年も決定しました!


予算5,000円で男性が喜ぶ!家電プレゼント厳選10選【2025年最新】

予算5,000円で男性が喜ぶ!家電プレゼント厳選10選【2025年最新】

「男性へのプレゼント、何を贈れば喜ばれるだろう?」 そんなお悩みを抱えていませんか?特に家電は、こだわりを持つ男性も多く、ブランドや機能性を考えると予算5,000円では難しいと感じるかもしれません。 この記事では、予算5,000円程度で購入できる、男性が喜ぶ高コスパ家電を厳選してご紹介します。ビジネスシーンで活躍する便利なガジェットから、プライベートを充実させる実用的な日用家電まで、人気ブランドから選び抜かれた10商品をピックアップしました。 どの商品も使い勝手にこだわり抜かれたものばかり。誕生日や記念日、ちょっとしたお礼など、様々なシーンで喜ばれること間違いなしです!


発行元:株式会社西日本新聞社 ※西日本新聞社の企業情報はこちら