ありがとうございます
以前、このコーナーに書いたが感謝をこめてもう一度。
ささいな会話がきっかけだった。2023年7月の夜、年金の足しにやっているアルバイトを終え、福岡市天神で軽く一杯やっていた時のことだ。当時、開催中だった水泳の国際大会「世界水泳選手権(世界水泳)」に出場したと思われる体格の良い数人の外国人男女と居酒屋で隣同士になった。ビールを酌み交わすうちに打ち解けて、ブロークンな英語で話をした。印象に残ったのが「フクオカは都会なのに街が清潔で、すごく治安がいい」だった。ごみの少なさを特に驚いていた。海外の若者に褒められたことをきっかけに、ごみ拾いを始めた。国際スポーツ大会開催の常とう句でもあるレガシー(遺産)につながるかもしれないと、散歩がてらほぼ毎日続けた。500日近くになった。
福岡市はごみを4種類に分別して収集している。その中で焼却してごみ発電に使う「燃えるごみ」と鉄・アルミなどを選別してリサイクルする「燃えないごみ」の2種類を集めている。一人では2種類の袋を持てないのでカミさんにも手伝ってもらっている。
生来飽きっぽい性格だが〝善行〟を施しているという勝手な自負のおかげで不思議なことに長続きした。明るいうちに家の近所を回るのは照れ臭いので夕食後、日没を待って歩き始める。直線距離にして4キロ程度だが、ジグザクに歩くので延べ6キロ、2時間程度かかる。暗い夜道を懐中電灯とトングを持って道端に捨てられたたばこの吸い殻や空き缶、ペットボトルなどを拾う。ごみが少ない日は本末転倒な話だが「獲物」が少ないとも感じるほどだ。
世相を見る気もする。かぜ薬や咳止め薬などのパッケージが大量に捨てられ、明らかにオーバードーズ(過剰摂取)をしていると分かる場所もある。カップラーメンの食べかけやコンビニ弁当の入れ物もある。若者がフラフラしている姿や道端で立ったままあるいは座りこんで食べている姿を想像しふびんに思えてくる。
ごみ拾いルートの沿線には地下鉄の駐輪場が複数あるが、そこで働くシルバー人材センターの人たちが1日に何度も周辺を清掃していることも知った。何より、ジョギングやウォーキングをしている人、塾帰りの子どもたちに「ありがとうございます」と声をかけられたり黙礼されたりすることがある。この場をかりて、こうした皆さんに感謝を伝えたい。ありがとうございます。
文・写真岡ちゃん
ぐらんざ世代の代弁者としてnoteなどで発信。
代筆屋業も開業しスピーチ原稿などの執筆や情報誌編集長としても奮闘中。