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岡ちゃんのきまぐれ散歩術 13

岡ちゃんのきまぐれ散歩術 13


昭和生まれですから…

 昭和生まれの悪癖なのかもしれない。何事もやりすぎてしまうのだ。この欄ではさんぽをして体験した〝一次情報〟を報告することを決め事にしている。

「さんぽ」をしなければ、その成果を読者の皆さんに報告できないので、これまでいろんなさんぽにチャレンジしていた。ところが、年末年始にかけて右足のかかと裏に違和感を覚えた。その痛みが次第に増し、立つこともままならなくなった。これでは、さんぽのネタがなくなり、少々大袈裟だが連載終了の危機が訪れる。

 長めに休んで締め切りギリギリに出稿しようと目論んだ。「積読(つんどく)状態にしていた本でも読もう」と寝床で何日も過ごした。かつて、大病を患い長期入院したこともあり寝床で過ごすのは苦にならないはずだった。次第にかかとの痛みも消えるだろうと、たかを括っていたが一向に引く気配がなく、気力まで失せていった。次第に本なぞ読んでいる場合ではないと、病院へ行くと「足底筋膜炎」と診断された。薬を飲んでリハビリテーションも受けた。それでも痛みが引かない。

 すると、昭和生まれの別の悪癖で今度は「不安」が頭をもたげてきた。以前この『ぐらんざ』内で担当していた「ぐらんざ診療所」コーナーで取材した「フレイル」のことが脳裏をよぎるのだ。フレイルの定義は「加齢や疾患によって身体的・精神的なさまざまな機能が衰え、心身のストレスに脆弱になった状態」だった。毎日、寝床で過ごしていると、まさに心身のストレスに体も精神も脆弱になっていくのがわかった。「これってフレイル?」と自問自答していた矢先に足を引きずる私を見た近所の人から「少し老け込んだんじゃない」と声をかけられた。

 このままではいけない。「いてててっ」と声をあげながら、少しずつ歩くようにした。山歩きの補助道具にしていたトレッキングポールも使っている。老け込んだと思われないように人に会う時はかかとに痛みはあるが普通に歩いているように見せている。

 「かかとの痛み」と「フレイルに陥る恐怖」のどちらかを選択しろ!と言われれば、私はかかとの痛みをかかえながらも元気に歩くふりを選択する。〝昭和世代のヒーロー〟ともいえる高倉健さんのようにこらえにこらえるようにしている。映画の健さんは、我慢の限界を超えて長ドスを携えて〝出入り(あるいは喧嘩)〟に行っていたが、私はトレッキングポールを手に健さんの決め台詞『不器用ですから』と言いながら、さんぽに出ている。

文・写真岡ちゃん

ぐらんざ世代の代弁者としてnoteなどで発信。ぐらんざはじめ雑誌やさまざまなSNSで、ライターとして活躍中。

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