屋外読書も楽しむ
自分だけの生理現象だと思っていた。書店や図書館を利用すると便意を催すことがある。秘密にしていたが、ウィキペディアにも載っているほど広く知られた現象ということを最近知った。1985年にこの現象に言及した女性の名前に由来し「青木まりこ現象」という。どうして起きるのか研究する人もいるという。一方で、いまだに〝都市伝説〟として語られることもあるらしい。
だが断言できる。80〜90パーセントの確率で催しているのだから…。そして、私にはもう一つ催すことがある。川べりを散歩すると本を読みたくなるのだ。特に福岡市を流れ博多湾に注ぐ二級河川の室見川を散歩するときに強い欲求を覚えるのが屋外での読書だ。
河畔にはウオーキングコースが整備され、自宅近くにあり頻繁に通っている。スピッツのヒット曲「ロビンソン」の歌詞には「〽新しい季節は/なぜかせつない日々で/河原の道を自転車で/走る君を追いかけた」とあるが、作詞をしたメンバーの草野政宗さんは福岡市出身で県立城南高校時代の室見川での思い出をモチーフにしたらしく、文学的な気分にもひたれる。
そんな室見川河畔を散歩していると頭の中に読みかけの本のページが思い出されてくることがしばしばだった。実際に本とコーヒー入りのポットをリュックに詰めて歩いたこともある。ただ、ベンチのある場所は犬の散歩やジョギング、サイクリングをする人が多く集中できないことにも気がついた。
読書に好都合な静かな場所を求めるうちに、上流域へ迷いこみ疲れ果てて本を読む目的を達成できないまま帰宅したこともある。そこで思いついたのがキャンプ用の軽量折りたたみ椅子だ。分解すればリュックに収まる。室見川を散歩する時には椅子を含めた「屋外読書セット」をリュックに入れて散歩に出るようになった。
読書をする時は、すっきりと晴れた日を選ぶ。絶好の読書ポイントを見つけ椅子を組み立て、本を読む。春はまだ先のことで風は冷たいが川のせせらぎが聞こえ、視線を上げると水鳥(おそらくオオバン)のつがいが優雅に川面を漂っていた。本のページも進み、いつもはすぐに忘れてしまう内容もしっかり脳内メモリーに入った。夏は海岸、秋は低山でも屋外読書に挑戦しようと思っている。

文・写真岡ちゃん
ぐらんざ世代の代弁者としてnoteなどで発信。ぐらんざはじめ雑誌やさまざまなSNSで、ライターとして活躍中。