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福岡麺人生82杯目・始まりはどこにでも 好来(ハオライ)ラーメン

福岡麺人生82杯目・始まりはどこにでも 好来(ハオライ)ラーメン


好来ラーメン
熊本県人吉市下青井町76
午前11~午後3時
ラーメン800円

 全国的に猛暑が続いた7月末、熊本・人吉盆地の暑さは容赦なかった。人吉ICを下りて、青井阿蘇神社方面に向かう。福岡から3時間ほどで目的地の「好来(ハオライ)ラーメン」に到着した。

 創業66年の老舗。とはいえ、外観が新しいのは、4年前の豪雨被害で建て直しを余儀なくされたからだ。入店して厨房を見やると、吉村毅さん(80)、将輝さん(42)親子がテキパキと動き、明るい声を響かせていた。地元客、県外客、そしてインバウンド客が次々に訪れるなど、活気あふれる店の様子は、以前と変わっていなかった。

 この店が多くの人を引きつけてきたのは、ここ好来にしかない一杯があるからだ。マー油を混ぜた真っ黒いスープに山盛りのもやし、キクラゲとチャーシューが載る。具材の下には、一般的な博多ラーメンの2.5倍の量はあろうかという麺が隠れている。

 まずはスープをすする。あっさり目のスープは、焦がしたニンニクとごま油の香ばしさが立ち上がる。具材をよけて麺をつかんで、ほおばった。加水率低めのストレート麺。汗をかきながら、一心不乱にわしわしと口に運ぶ。スープに浸したもやしにも、はしを伸ばしつつ食べ進めていると、麺はあっという間になくなってしまった。

 店の創業者は、吉村さんの父、隆さんだ。熊本市で屋台の雇われ店主を5年間ほどしていた隆さんは、昭和33年に妻の古里だった人吉で独立した。吉村さんはいったん、熊本市の製麺所に就職し、開店から2年遅れで父親の元に戻った。スープは父、麺は息子が担う。ラーメン店が少なかった人吉で受け入れられた。

 大きな転機は吉村さんが30歳くらいの頃だ。「おやじが保証人になっていた借金をかぶることになって、店を売却したんです」。別の仕事も考えたという吉村さんだが「自分にはラーメン以外なかった」。借金をして店を買い戻し、店主として再出発した。

 唯一無二の味となったのもこの頃。父親時代のスープは、今ほど黒くはなかった。吉村さんは「とにかくインパクトがほしかった」と、現在のようなマー油を大胆に使った黒いスープに変えた。評判は徐々に伝わり、人気店に。県内外から客が訪れ、学んだ弟子は全国に広がった。

 前途洋々だっただけに、4年前の豪雨は吉村さん親子に大きな試練を与えた。球磨川が氾濫し、濁流は店を飲み込んだ。1階だけでなく、自宅があった2階部分まで浸水して家屋は損壊。厨房機器、製麺機もすべてダメになった。当時、私も現地に取材に赴いた。変わり果てた店の前で吉村さんが口にした力強い言葉を今も覚えている。

「裸一貫からのスタートをするしかないですよ」。

 旧店舗は取り壊し、2年の休業をへて再びのれんを掲げた。「私だけなら廃業した。でも息子がいるし、修業した子からの助けもあった。何よりお客さんがいるから」と吉村さん。新しい店には、吉村さん、将輝さんの笑顔があり、客の笑顔がある。新たな一歩がしっかりと刻まれていた。

新しい製麺室に立つ吉村毅さん、将輝さん親子


「ぐらんざ」は、来月から発行体制が変わる。7年前に始まったこの連載も、82回で最後となる。始まりがあれば、終わりがある。そして、終わりがあれば、始まりもある。(おわり)

文・写真小川祥平

1977年生まれ。記者、編集者。3月に新刊「ラーメン記者 九州をすする!替え玉編」を刊行。「CROSS FM URBAN DUSK」内で月1回、ラーメンと音楽を語っている。
X(旧ツイッター)は@figment2k

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