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福岡麺人生81杯目・この地で「昔ながらの味」守る 清陽軒本店

福岡麺人生81杯目・この地で「昔ながらの味」守る 清陽軒本店


清陽軒本店 大分市大手町1-1-6
午前11時~午後2時 火曜定休
ラーメン680円

 10年ぶりだろうか。随分とご無沙汰していたが、清陽軒本店(大分市)の一杯を前にすると、変わらなさに安心した。透明感のあるスープに輪切りの卵とノリが載っている。すすってみると、あっさりながら、熟成感もある。いかにも「昔ながらの味」。パンチは弱いかもしれないが、豚骨ダシがじわりと口の中に広がる。好みのタイプの味だ。

 厨房を見ると、5代目の藤山拓也さん(34)が母親らと働いている。もう10年かと思う。前回訪れた時は、藤山さんの祖父で3代目の正光さんも健在で、創業当時の話を聞かせてもらった。

 昭和32年、正光さんの兄、重利さんが始めた。修業先は、福岡県久留米市の「清陽軒」。久留米の清陽軒といえば、昭和27年に開業した屋台。1度は店を畳んだが、15年前に復活している。久留米で人気の「大砲ラーメン」とは、創業者同士が兄弟で関係が深い店でもある。

開店当時の写真には、菊平さん(後列左)と創業者の重利さん(後列中央)が収まる

 ただ、両店ともに濃厚な一杯が特徴だ。ここ大分の清陽軒とは違う。大分に合わせた味ともいえるが、「変わったのは久留米の方では」とも思う。そもそも、昔の久留米ラーメンは今ほど濃厚ではなく、時代のトレンドで濃厚寄りになっていった。大分清陽軒は、久留米から出たことで、逆に「久留米らしさ=昔ながらの味」が残っているのである。

 店にはオープン直後に撮影された1枚の写真がある。看板には〝清陽軒大分支店〟と書かれており、その下には「本店久留米 支店日田」と続く。藤山さん一家は大分県日田市の出身であり、重利さんは古里での開業も考えたらしい。ただ、既に日田支店があったため、大分市に店を構えた。ラーメンがまだ珍しかった土地で繁盛し、いつの日か屋号を「本店」にした。

 家族でできる仕事を―。重利さんがラーメン稼業を選んだ理由という。歴史はその思い通りに刻まれた。創業当初は、重利さんとその父親、菊平さんが切り盛りした。重利さんが体調を崩すと、東京で働いていた正光さんが呼び戻され、妻のキヨさんとともにのれんを守った。正光さん夫婦のあとは娘に。さらに、その息子である藤山さんが店に立つようになった。

 厨房に入って十数年になる藤山さん。のれんをつなぎとめるものは「昔ながらの味」である。付き合いのあった麺屋も肉屋も廃業し、新しい取引先に変えている。近年の物価高は容赦ない。事業承継なども考えるが、手づくりのラーメンを支えるのは、経験やさじ加減だ。「数値化やマニュアル化はできない。第三者に任せてダメになるなら、自分の代で終わったほうがいい」と言う。

 実は福岡市にも大分経由の「清陽軒」がある。大分で学んだ方が、最初は博多で店を出し、その後、兄弟それぞれが南区の西長住、若久、横手に店を構えた。味は独自に育んでいったが、ラーメンのルックスを見ると、久留米ではなく、大分経由というのがわかる。ただ、この数年でうち二つが閉店。今は横手店のみとなっている。

 個人経営の厳しさは、どこも同じだ。藤山さんは「70年までは何とか、でも100年は見えません」と話す。「昔ながらの味」が貴重になった今、できるだけ長く続いてほしいと切に願う。

文・写真小川祥平

1977年生まれ。記者、編集者。3月に新刊「ラーメン記者 九州をすする!替え玉編」を刊行。「CROSS FM URBAN DUSK」内で月1回、ラーメンと音楽を語っている。
X(旧ツイッター)は@figment2k

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