幸福度を感じた
私は子供のころプラモデルマニアだった。戦車や戦闘機、軍艦、レースカーなどジャンルを問わず作ってきた。そんな子供のころに作った局地戦闘機「震電」の実物大レプリカ(模型)が朝倉郡筑前町立大刀洗平和記念館に展示されていると聞き訪ねてみた。展示されていた震電は、米国のアカデミー視覚効果賞を受賞した映画「ゴジラ-1.0」でゴジラ迎撃に使用される幻の戦闘機として登場していた。震電は、その撮影用に作られたものだった。
震電のフォルムは高速で超高高度に向かうためプロペラが後方にある前翼型の独特な形状だ。まるで白亜紀末に絶滅した翼竜のようでもある。私は映画用に作られた精密な実物大の震電を見て思わず「で、でかい」と呟いてしまった。うかつなことに私は子供のころに作った72分の1スケールのプラモデルの記憶しかなかったから大きく感じるのは当たり前だった。私のような震電目当ての人たちが全国各地から車や大型オートバイを使って訪ねてきていた。私同様、子供のように震電を見入るその姿に「このおじさんたちもプラモマニアか飛行機オタクなのだろう」と展示品だけでなく人間観察まで楽しんだ。
ふと、以前不動産開発大手「大東建託」(東京)が毎年実施している九州・沖縄版居住満足度調査「街の幸福度」ランキングで筑前町に隣接する三井郡大刀洗町が今年の1位になったというニュースを思い出した。平和と幸福はまさにコインの表裏、散歩をして幸福度も実感したくなった。
記念館を出て、かつて東洋一の規模を誇った陸軍飛行場跡を含む周辺を歩いてまわった。おだやかな五月晴れの周辺地域は、若いお母さんやお父さんたちが小さな子供さんと歩いたり、公園で遊ばせたりする姿があった。子育て支援や町営マンションなど住宅支援の充実ぶりが幸福度に繋がっていることが実感できた。
平和記念館では、おばあさんと孫が周辺の史跡をたどり平和の大切さを語り継ぐ映像の上映や終戦直前に特攻で亡くなった若者の写真や遺書も展示されていた。一方で記念館の周辺では子供たちが歓声を上げ、その様子を見守る保護者がゆったりとした時間を過ごす穏やかな日常があった。幸福なひと時を私も共有させてもらった。
文・写真岡ちゃん
ぐらんざ世代の代弁者としてnoteなどで発信。
代筆屋業も開業しスピーチ原稿などの執筆や情報誌編集長としても奮闘中。