オーディションで勝ち取った配役
ダスティン・ホフマン主演の映画から始まり、その後ミュージカル化された「トッツィー」が博多座にやってきます。主演を務めるのは、ミュージカルはもちろん、映画や歌、ドラマ、バラエティと幅広い分野で活躍中の山崎育三郎さん。オファーを受けたのかと思いきや山崎さんを含め今回のキャストは、全員オーディションで役が決まったそうです。
「今まで数々のミュージカルに出演させていただきましたが、過去最高に音域が広い楽曲です。オーディションの時は、まだ日本語の歌詞が無く英語での歌唱。しかも女性のソプラノキーまで必要なので、2年程前から発声の勉強をし直し、トレーニングをしてオーディションにのぞみ、この役を勝ち取りました」
売れない俳優マイケルに 共感するところとは?
山崎さんが演じるのは、演技へのこだわりと熱意は人一倍ながらも、性格に難がある売れない俳優のマイケル・ドーシー。ある時、仕事が欲しい一心で女装をしてドロシー・マイケルズと名乗り、女性役のオーディションを受け合格してしまい、これが転機となり自分でも想像しなかったようなスターになっていきます。
「マイケルは自分のことしか考えていないところがあって、人のことを見ることができませんが、ドロシーの時は人格が正反対。ドロシーになってからは人のことを思いやったり、人に寄り添ったり、人々から賞賛されるような人物になっていきます」
同じ人物でありながらマイケルがドロシーになった時の違いは、山崎さん自身にも共感するところがあるそうです。
「自分自身が、もともと人見知りで人前に出ることが嫌いで、いつも母の後ろに隠れているような子供でした。それがミュージカルに出合い、自分ではない何かに入り込み、役になりきった時に堂々としていられました。そうすることで自分を解放できたことが、ミュージカルの道に進むきっかけになりました。これは、マイケルがドロシーになった時の気持ちの変化と共通するところだと思います」
たしかにドロシーの衣裳に身を包んで話す山崎さんは、いつもと違う雰囲気を醸し出します。
「ドロシーを演じる時は、若い頃の祖母をイメージしています。祖母は、自分の誕生日に服もメイクもばっちり決めてディナーショーと称して『愛の讃歌』を歌うような人です」
「トッツィー」を通して伝えたいこと
コメディでありながら挫折と成功、恋愛や友情など登場人物の人生と想いが交差する「トッツィー」。なぜ、マイケルがドロシーにならざるを得なかったのか、1つ上のステージに行きたくて必死にもがくさまが作品の根底に流れています。
「今は多様性の時代。いろいろな形がある中で、人を受け入れること、みんなそれぞれ違うということ、そして年齢関係なくいつからだって自分が一歩踏み出せば変われる、新しい自分に出会えるという大きなテーマがあると思います。そういうことを感じながらもミュージカルコメディなので、とにかく笑って、素敵な音楽、素敵な衣裳、素敵な振り付けを堪能していただきたいです。そして、見終わった後に『楽しかった。最高のミュージカルを見た!』という気持ちになってもらえれば嬉しいです」
映画とも違う、日本ならではの演出プランで魅せる日本版トッツィーに注目です。