幼い頃から絵を描くことがずっと好きだった幸尾さん。自分が描いた絵を見て「祈りを感じる」と言われたときは嬉しくて印象に残っていると話す。
ぐらんざ読者の共感を呼ぶことで人気の連載コラム『世は万華鏡』。馬場周一郎さんの文章に合わせ、毎月心安らぐイラストを描いてくれる幸尾螢水さんに今回注目したい。
「絵を描くときは暗い絵ではなく、楽しくて明るい絵を描きたいなと思っています。例えば、色味で音楽のリズムを連想させるような絵。そこに平和的なものを感じ取ってもらえれば良いな」と話す幸尾さん。
2017年の太平洋美術展に出展し、努力賞をいただいた作品
今年で62歳になるという彼が本格的に絵を描き始めたのは意外にも58歳、長年勤めた会社を退職した後のこと。一度絵に集中すれば食事や風呂を忘れがちになる程で、展覧会へ出展する際の締切時には徹夜をすることもあるとか。それでも「好きなことをやれてストレスがなくなった」と穏やかに笑う。
「得意なイラストは花や人、そして想像上の動物。耳が翼になった象や羽の生えた金魚とか、そんなやつが好き。そういう意味じゃ、子供の頃によく読んだ童話や絵本などが根っこにあるのかも。甘い少女趣味のような(笑)」。自己流で始めたという作品の数々を見ると“幸尾さんの頭の中を覗いてみたい”と思う程に独創的でありながら、どこか親しみのある温もりを感じる。
「映画を観たり、本を読んだりしてヒントを得ることはあります。それと旅行に行くことが好きなので、そのときは意識していないけど、その地で見た絵とか、街にいる人のファッションの色味などは覚えているかもしれないですね」。
ピースボート船内。移動中はほぼ毎日絵を描いていたそう。