たなべ保存歯科 院長 田邊 一成さん。
歯学博士、歯科麻酔認定医の田邊さん。
予約待ち3年の歯医者さん、「たなべ保存歯科」院長の田邊一成さんは、探求心の塊のような人だ。歯科医師として日夜治療にあたる一方で、九州大学歯学部在学の時から抱いていた疑問を解明する研究を現在も続けている。
「虫歯治療が必要な人の中には、きちんと歯磨きしている人もいる。反対に、あまり手入れをしなくても虫歯になりにくい人もいる。その違いは何だろう?もしかしたら口腔内の細菌の違いかもしれない」。田邊さんは口内細菌の一つである乳酸菌に着目し、大学病院の研究チームや歯科医師、製薬メーカーと共同研究を行う。乳酸菌配合の整腸剤を使った歯磨きで歯周病が軽減する事例を検証しながら、研究を繰り返す日々。そしてようやく見つけたのが、『乳酸菌WB21株』。研究の結果、口臭、歯周病、虫歯などの原因菌増殖を抑制する働きがあることがわかったのだ。
「ただ、『乳酸菌WB21株』にも弱点があったんです。乳酸菌の寿命は短く、効果を持続させることが難しくて」。どうすれば効果を持続させることが出来るか…。試行錯誤し、タブレット(錠剤)状にすることを思いついた。「タブレットは舐めながらゆっくり溶かすので、口の中に留まる時間が長くなりますよね。しかも 〝乳酸菌含有飴〟、つまり食品と同じ扱いになるので、どなたでも気軽に試すことができるんですよ」。
タブレットが完成した今でも、田邊さんは研究を辞めることはない。なぜそこまで乳酸菌と向き合い続けるのだろうか?「学生時代に疑問を持ったことが、今の自分の基礎なんだと思います。これからは抗生物質に対する耐性菌の問題も深刻になるでしょう。
乳酸菌の研究を続けて、この問題にも役立ててみたいです。それに、WB21を中心とした口腔内環境の改善の必要性を知ってほしい。口臭や歯周病、虫歯に悩む人、どこの病院に行っても治らないという人を治してあげたい。最後は皆さんに笑顔になってもらいたいですね」。
治療と研究で忙しい毎日を送る田邊さんには、リフレッシュも欠かせない。休日にはウインドサーフィンやスキー、スノーボード、時には仲間とのバーベキューなどを精力的に楽しむ。このオンとオフの切り替えの上手さが、田邊さんを支えているのだろう。朗らかに話す田邊さんの笑顔が、そう感じさせた。
オフもアクティブ!スキーを楽しむ田邊さん。