インタビュー中、思わず「なぜそんなに肌がつやつやしているんですか?」と尋ねてしまうほど、全面に活力がみなぎっていた吉留社長。現在71歳。
鹿児島県で「薩摩なた豆」の製造販売を行うヨシトメ産業の吉留たかし社長。普段から物腰やわらかな雰囲気を持っているが、なた豆の話をし出すと目をキラキラさせ、生き生きと輝きを放つかのよう。その熱意はどこからくるのか。まずは社長が愛する「薩摩なた豆」との出会いから伺った。
「まだサラリーマン時代の25年程前、勤めていた会社で健康食品としてなた豆を取り扱うことになり、ある薬学博士と知り合ったんです。そのとき、なた豆のお茶を試作されているのを見て“これは面白い”と思い、商品化しては?という話になったんですよ。当時なた豆は主に中国から輸入していたものですから、国産はないのかと調べれば、なんと生まれ故郷の鹿児島で栽培されていることがわかって!なた豆に魅せられ49歳、一大決心したんです」。そう、脱サラだ。前々から家庭でも「会社をやりたい」と話していたようで、家族も快く応援してくれたとか。
しかし、熱意はあってもそう簡単には上手くいかないのが世の中。「始めのうちは売上げがなかなか上がらず、本当に胃が痛かったです」と話す。それでも諦めなかったなた豆商品の販売。今では県や市の行政も認める鹿児島県特産品となり、多くの人に広まるように。吉留社長をそこまで突き動かすものとは?
10月上旬に収穫時期を迎える薩摩なた豆。その大きさから「ジャックと豆の木」のモデルになったという説も。なた豆についてはP48で紹介。
「従業員もいますから“会社をなんとかしなきゃいかん!”という思いと、郷土愛ですね。始めは2人からやり出した鹿児島のなた豆農家も、今では50名くらいになりますからね。彼らといかにして良いなた豆をつくるかという勉強会をしながら、薩摩なた豆の生産・販売を地域おこしにしたいと思っています」。次は国を超えアジアに進出させることが目標だという。
「最初に話した薬学博士に言われた言葉で、人はよく『もう60だから定年だ』と言いますが、“もう”ではなく“まだ”なんですよ、と。人生100年、私の場合はまだあと30年もある。夢は30年後、『なんでそんなに元気なんですか?』と聞かれたとき『なた豆効果です』と胸をはって言えるようになりたい。そのためには同世代とだけ付き合うのでなく、もちろん年上の人から色々な教えを乞わなければいけないし、若い人とも話すようにして気力・体力を養っていきたいです」。まさに、ぐらんざ世代が目標とする一つの生き方に感じた。