20歳の頃、盲導犬の新聞記事を見て興味を持ち、当時盲導犬協会がなかった九州を出て、栃木の盲導犬協会にて研修させてもらったと話す桜井さん。
身体の不自由な人のために物を取り、移動のサポートをする「介助犬」や、耳の不自由な人のために必要な音を知らせる「聴導犬」。これら補助犬 の存在を知っている人はどれくらいいるだろう。補助犬の育成や貸与などを行う九州補助犬協会の理事長・桜井恭子さんにお話を伺った。
「歴史が長い盲導犬に比べてまだ圧倒的に数の少ない介助犬や聴導犬。2006年に発足した九州補助犬協会ですが、介助犬の育成においては九州で唯一の機関となります。介助犬や聴導犬は認定試験のレベルが高く合格するのが非常に大変なんです。犬の条件クリアに限らず、利用希望者も認定機関での面接に合格する必要があります。介助犬の貸与は無償ですが、生活費用を含め犬の面倒をみていけるかどうかも審査されるので持てる人が限られてくるのです」と現状を言いつつ、もっと気軽に介助犬を持てる世の中にしたいと話す桜井さん。
介助犬の普及に活躍する「テレサ」。
自宅を事務所兼、訓練所にし、日々犬と関わる生活をしている彼女の言葉で印象的だったのは、「犬の方が自分を観察している」ということ。「利用者から聞いた話、何も言わなくても落とし物を拾ってくれるようになった介助犬が、教えたこともないのに、おしゃぶりなど人間の赤ちゃんが口に入れるものにおいては自分が拾っていいかどうか目で合図するそうなんです。そういった、あうんの呼吸ができるようになるのも介助犬の素晴らしさかなと。一緒にいればいるほど自分の気持ちを理解し察してくれる。気を遣うことなく心が通じる存在がいることは、障がいをお持ちの方にとってすごく心強いのではと思います」。
街中で介助犬を見かけても、お仕事中の犬には触らないことがマナー。
介助犬を一頭育成するのにかかる費用は300万円以上。認定試験に合格すれば助成金が出るものの、訓練する全ての犬がなれるわけではないため、ほとんどが寄付や募金などによって賄われている。思わず、大変…と言葉を漏らしてしまうと、「自分が好きなことをしているから続くんです」と微笑む桜井さん。「個々の犬とやり取りするのも好きですし、介助犬を通して障がいを持った方に日々の幸せを提供できることが自分にとってのやりがいだと思います」。
介助犬たちは、命令されたから動くというよりも、サポートすることを楽しんでいる。桜井さんの思いが伝わっているのだろう。
※介助犬、聴導犬、盲導犬の総称。2002年の身体障害者補助犬法制定により、盲導犬だけでなく介助犬と聴導犬の育成も本格的に始まった