高齢化が進む中、最期まで住み慣れた地域で自分らしく生活を続けられるように住まい、医療、介護、予防、生活などの支援を地域で細やかに提供する「地域包括ケアシステム」の充実が求められています。その医療の分野において期待が高まっているのが、在宅医療です。
在宅医療とは、自分1人では通院することが困難な人に対して、患者が住んでいる場所に医師や看護師が出向いて行う医療のことを指します。在宅医療を受けられる基準である「通院が困難かどうか」は医師の診察で決定されますので、希望する場合はかかりつけ医に相談してください。かかりつけ医がない場合は、地域包括支援センターに相談するか、福岡市などは医師会のホームページで訪問診療を行っている医師を探すこともできます。
在宅医療では多職種との連携が欠かせません。例えば、歯科医師と連携することで歯科治療を、訪問薬剤師と連携することで薬の受け取り、服薬指導などを在宅で受けられます。特に鍵となるのが、訪問看護師、ケアマネージャーとの連携です。訪問看護師は病状の観察、把握を行い、医師の指示による医療処置を行います。ケアマネージャーは、患者の生活や家族背景、要望、経済状況などを把握し、多職種の人たちの情報をまとめ、介護計画を立てます。さらに在宅介護サービスと連携することで、家族の負担軽減や、1人暮らしの人でも在宅医療を受けることが可能となります。
在宅医療は医療保険と介護保険の両方を使い分けながら医療や各種サービスを利用して行われます。個人負担が一定額を超えた場合は、「高額療養費制度」も適用されますので、費用が心配な人はかかりつけ医やケアマネージャーに相談されてください。
ただ課題もあります。複数の医師が在籍し訪問診療を専門としている医療機関では24時間体制での対応も比較的可能ですが、外来診療をしながら1人で在宅医療も行っている医院では対応困難な場合もあります。また、家族が介護に限界を感じて、入院を希望される場合もあります。
在宅医療で大切なことは、ご自身、ご家族、医療・介護に関わるスタッフの間で、治療、リハビリの方針、生活の希望について何度も話し合うことです。また、日頃から信頼できる「かかりつけ医」を決めておき、何でも相談できる関係づくりをされておくと良いのではないでしょうか。
担当医
野口内科クリニック
内科、消化器内科、肝臓内科
野口 秀哉(のぐちひでや)院長
協力:福岡市医師会