もう戻れない
趣味と実益(通勤)をかねて自転車に乗り始めて30年以上になる。福岡市内には東京のような激坂は少ないが、あるところには上り坂がある。できるだけ軽いスポーツタイプに乗り、上り坂をものともせず乗ってきたつもりだが、乗り終えた後に膝の痛みを感じるようになった。とどめはチャイルドシートを後ろにつけて子供さんを乗せたママチャリの女性に坂道でスーっと抜かれて、ふと見るとそれが電動アシスト車だった。
長年お世話になっている自転車屋さんに駆け込み、電動アシスト自転車購入について相談した。「お値段も性能もピンキリですが、もう(アシストなしの自転車に)戻れなくなりますよ」と一応注意されたが、重量20キロ以下のものという条件を付けたらあった。電動アシスト自転車を所有するか、もしくは試乗したことがある人なら分かると思うがアシストモーターとバッテリーで30キロ近くなる車両がほとんどなのだ。条件にぴったり合い、しかも新車で10万円台と比較的安価だった車種を買った。孫や荷物をひょいと載せることができるチャイルドシートも後ろに付けた。果たして…
いやはや、こんなに気持ちよいものだったのかと心底、感心している。どこにでも、電動アシスト自転車で出かけるようになった。何せ上り坂が苦にならない。どんな場所も平らな道を漕いでいる感覚だ。乗り終えた後に頻発していた膝の痛みもなくなった。おまけに薬を処方してもらうため、月に一度クリニックで体重測定、体脂肪率、筋肉量、血液検査をしてもらっているが、何と筋肉量まで増えていた。
朝夕、通勤で使い一日2時間近くペダルをこいでいるのだが疲れも感じない。むしろ疲れが取れている気がする。日本のプロ野球と米国メジャーリーグで投手として活躍した故・伊良部秀輝さんは登板後必ずエアロバイクをこいで「疲労物質」を体から排出していたという記事を読んだことがある。軽いペダルをこぎ続けることで同じような効果があるのかもしれない。良いことだらけだが、最近軽いはずのスポーツ自転車に乗ってみた。車重は軽いのだが、ペダルが重い。自転車屋さんの言った通り、もう戻れなくなった。
文・写真 岡ちゃん
元西日本新聞記者。スポーツ取材などを経験し、現在ブログやユーチューブなどに趣味や遊びを投稿し人生をエンジョイするぐらんざ世代。