鳥見酒に挑んだ
新聞社の大先輩・塩田康文さんにバードウオッチングの指南を受けた。場所は福岡市西区の今津干潟。11月の平日の朝。JR九州筑肥線の九大学研・都市駅前で待ち合わせてバスで今津干潟近くまで行き、バードウオッチングを開始。
バスを降りると、いきなり塩田先輩が「今日はついている。モズがおる日は不思議といろんな野鳥に出会える」と河口そばにかかる電線を指さした。塩田先輩に双眼鏡まで借りたがなかなか見つけることができない。遠く離れた場所で「クワッ、クワッ」と鳴くマガモは何枚も写真に納めたが珍しい野鳥を見つけることができずにいた。
塩田先輩から「野鳥を見つけるコツは微妙な動きがあるものや色の違うものを意識するといいよ」とアドバイスを受け、少しずつ遠くで羽を休める野鳥らしきものを確認できるようになった。するとイソシギ、ミサゴ、アオアシシギなど…がいたと思う。断定はできない。素人なので本物の野鳥観察家さんたちに「それは違う」と怒られるかもしれないので〝多分〟とぼかしておく。
薄曇りだったが、時間が経過するにつれ海風が強くなり体が冷えてきた。塩田先輩と体を温めることで合意した。近所を歩く人にコンビニの場所を聞いて日本酒と焼き鳥を買った。二人で海辺のベンチに座って日本酒をチビリチビリ、目では野鳥を追いながら焼き鳥をガブリとやる。鳥を愛でたのかトリを味わったのか、とにかくエネルギーだけは充填できた。
塩田先輩と鳥の習性や世相の話も交えながら野鳥を探していたら10キロ以上も歩いていた。不思議と疲れも体の痛みも感じなかった。二人とも日本酒のワンカップ一杯では足りず、もう一杯買ってグイッとやったが体を十分に動かしていたおかげで心地良いほろ酔いだけが残った。
帰路につこうと歩いていたら塩田先輩の予言通り、背中の青い羽が美しいイソヒヨドリが干潟で餌をついばみ、冬に飛来する貴重な珍鳥クロツラヘラサギの姿まで確認することができた。そして気がついた。バードウオッチングなど洋風な言い方するからいけない。「鳥見酒に挑んだ!」とする。
文・写真 岡ちゃん
元西日本新聞記者。スポーツ取材などを経験し、現在ブログやユーチューブなどに趣味や遊びを投稿し人生をエンジョイするぐらんざ世代。