金銭面から描く人間臭い『忠臣蔵』
ドラマや映画など、これまで300を超える映像化作品を生み出してきた忠臣蔵。だが、今回、堤真一さんが大石内蔵助を演じる新たな忠臣蔵は一味も二味も違う。
「これまでの忠臣蔵という物語が持つ“忠義を尽くす武士道”という世界観を、この作品では金銭面から捉えて描いています。すごく人間くさい話なんですよ」と堤さん。
御家お取り潰しとなった赤穂藩。収入がなくなったにも関わらず、御家再興を画策するにも、討ち入りを果たすにも何にせよお金がかかる。なんとか節約しようという勘定方を始めとする役人サイド「役方」と、お金のことは気にしない戦担当の「番方」との争いが面白い。まるでどこの会社にもある経理と営業のやりとりを見ているようで、浪士たちの心模様が途端に親近感あるものに思えてくる。
「この映画では、本当は討ち入りしたくない人の心も描いていたりする。赤穂浪士の中には、好戦的ではない気持ちの弱い人間もいるけど、流れで討ち入りをしなくてはいけない状況に追い込まれていく。僕からすると、もしかしたら本当はこっちが真実じゃないの?とさえ感じるんです。僕が演じる大石は自分自身はヒーローにはなりたくないけど、ヒーローになっちゃったような人(笑)。忠義や名誉のためではなく、流れで討ち入ることになった人たちだから、みんなかっこよくはない。だけど、そこに人間臭さが溢れているんですよね」
個性豊かな出演陣と演じる面白さ
撮影はとにかく楽しかったと語る堤さん。個性派俳優の濱田岳さんや、妻夫木聡さん、さらに堤さんとW主演である岡村隆史さんをはじめとする芸人勢など、バラエティ溢れる出演陣もこの映画の魅力のひとつ。
「クランクインの日から、かなり大人数での撮影スタートでしたが、スムーズに進行しました。色々なジャンルの役者や芸人さんが揃って同じ現場にいる。そんな面白さや環境の中で演じる楽しさがありました。岡村君の芝居は、監督の演出だと思いますが、抑えた感じでした。だから撮影の最初の方は『こう来たか~』って。僕らがテレビで見て抱いていた岡村君のイメージを良い意味で裏切って、そろばん弾いてばかりいる寡黙な勘定方の男になりきっていましたよ」
撮影の中で特に印象に残っているシーンについても、堤さんは他キャストの演技についてあげてくれた。
「これから討ち入るぞというときに、濱田岳くん演じる毒見役の大高源五たちが並んでいるところですね。彼らを見ると泣けてくるんですよ。彼らは身分的には討ち入りをしなくてもいい人たちなんです。それに、役者としても濱田君たちとはずっと一緒に戦ってきたようなものなので、あのシーンはうるっときてしまう。この作品に参加できて、本当に良かったです。役者としても、大きな転機になる作品だと思っています」
映画『決算!忠臣蔵』
脚本・監督:中村義洋
出演:堤真一、岡村隆史、濱田岳、横山裕、妻夫木聡ほか
配給:松竹
◎11月22日よりT・ジョイ博多、ユナイテッドシネマ・キャナルシティ13、ユナイテッド・シネマ福岡ももち、福岡中洲大洋 他にて公開
山﨑智子=文
text:Tomoko Yamasaki