血圧は、環境や体調によって高くなることも低くなることもあります。日本高血圧学会の「高血圧治療ガイドライン」でも、家庭で計測するより医院などで計測する方が高めとなるため、至適血圧を診療室血圧(収縮期120、拡張期80)と家庭内血圧(収縮期115、拡張期75)のように最高・最低ともに5mmHg低く設定しており、安定した環境である家庭血圧を重視しています。
また、定期健康診断などで高血圧を指摘されても、よほど高い血圧でないかぎり自覚症状がないのも特徴です。それゆえに放置されてしまいがちですが、そのような人には「高血圧は、発症から脳梗塞などの続発する病気になるまでに10年から20年も時間がかかる。気の長い病気です」と話すようにしています。一方で、今や日本の企業は65歳定年が当たり前になってきています。長寿社会になり65歳から10年先、20年先がやっと自分の時間となり人生を楽しめるチャンスが待っているのです。従って、高血圧を放置し脳梗塞などの重い病気にかからないようにしなければなりません。
世界中で大ヒットしたハリウッド映画「バック・トゥ・ザ・フューチャー」の主人公のように過去にさかのぼって重大な病気の因子となる「高血圧」を予防し、未来を変える事はできないので、あらかじめ対策が必要となります。予防法は、まず減塩食になれることです。だしを十分に利かせた食事はすぐに慣れ、おいしさすら感じるようになります。もう一つは、ウオーキングなど適度な軽い運動、そして肥満防止です。
こうした高血圧対策を続けていると血圧も下がり一時的に健康体になります。しかしそれは一過性のものに過ぎません。せっかく体に良いことやっていたのに「自分はもう健康体になった」と中断してしまう人が多いのも事実です。シニア世代になると血圧は自然に上がるので、その中には薬が必要となる人もでてきます。患者さんの中には「その薬は強くないですか?」とか「一生飲まなければなりませんか?」と聞いてくる人がいます。しかし、医師はその患者にとって必要な薬を処方するので、薬の強弱ではなく効き目のある薬が良い薬と考えなければなりません。服薬を普通の生活習慣としてとらえることが大切です。
高血圧は、ひそかに着実に体をむしばんでいきます。健康診断や診察などで高血圧を指摘されたら、粘り強く治療していきましょう。そうすれば、豊かで楽しい将来が待っています。
担当医
江頭会さくら病院
副院長 江頭 省吾先生
協力:福岡市医師会