新型コロナウイルス感染症に関しては、2021年初めの緊急事態宣言によりある程度感染者数が抑えられていました。しかし、ここに来て再び変異株の流行などにより再度感染が拡大する可能性が出てきています。私たちは、これまでどおり3密を避けて会食を伴う会合は極力控えることが感染を抑えることが大切です。
いわゆるコロナ禍により、誤った知識や誤解から感染を恐れて医療機関への受診控えをする現象が生じています。理由は①通院するのに公共の交通機関を使うのが怖い②待合室での感染が怖い③在宅勤務になっているので外出が面倒になった―などです。福岡市医師会の調査では89%の医療機関で受診者数が減少しています。
一方で、受診控えによって持病が悪化している方が増えているのも事実です。高血圧や糖尿病が悪化している人、運動不足や介護事業所の一時閉鎖などにより足腰が弱くなったり認知症が進んだりしている人もいます。新型コロナウイルス感染症を恐れるあまり健康診断を受ける人も減少し、生活習慣病やがんなどの悪性腫瘍がかなり進んだ状態で見つかる例が報告されています。医療関係者は、診断に訪れた人とじかに接したり、問診をしたりすることで重大な病気を見つけた経験を何度もしています。
受診控えの背景には新型コロナウイルス感染症に対する誤った理解もあるようです。感染対策がしっかりと行われている医療機関の外来で、ウイルスに感染することはほとんどありません。しかも感染対策を施していない病院やクリニックは存在しません。「病院へ行くとコロナが移る」ということはあり得ませんし、逆に検査を受けないことで持病や悪性腫瘍が悪化するリスクの方が高くなるのです。
「私はコロナではない」と強く主張して検査を拒む方がいることも聞いています。反対に「自分はコロナではないか?」と何度も検査を希望する方もいらっしゃいます。かかりつけ医の先生方は検査結果やさまざまな臨床症状からPCR検査の必要性を十分に検討していますので、しっかり相談することが大切です。
また、かかりつけ医がいない方は風邪をひいたときやインフルエンザワクチンなどで受診する医療機関の先生にご相談ください。新型コロナウイルス感染症の拡大で多くの人が実感されたのではないでしょうか?
日ごろから小さなことでも相談できるかかりつけ医を見つけておくことが、自分の健康を守る最善の策なのです。
担当医
牟田内科クリニック
院長 福岡市医師会常任理事(広報担当)
牟田 浩実先生
協力:福岡市医師会