マンションごとに長期修繕計画が立てられているものの、建物への計画のみで設備への修繕資金が不足していることも多々。放っておくと、思わぬ事故やマンションの価値低下につながります。設備への資金がきちんと積立られているのか、今一度確認してみましょう。
■マンション管理は経営的観点を大切に
マンションを維持管理していくためには、経営的観点を持つことが大切です。会社を経営するためには、「ヒト・モノ・カネ」が必要ですが、マンションの場合は「役員・建物・管理費、修繕積立金」がそれに当たります。このため、マンションの管理組合役員には、長期修繕計画を、将来を見越して精査していくことが求められます。役員でなくとも集会などが開催される場合は積極的に参加するなど、修繕工事を自分事としてとらえることが大切です。
また、長期修繕計画による予算が立てられていても、物価や工事費の上昇などから実際に必要な金額と合っていないことも。このため5年に1度は計画の見直しが必要。予算が不足している場合は、通常は12~15年ごとの建物部分の修繕周期を建物の劣化診断の結果が良ければ18年周期に延長することや、それが不可能ならば積立金を増やし対応する必要があります。
■未来に残すために長寿命化策を
老朽化したマンションの今後を考える場合、「建て替え」が頭に浮かぶことも。ですが、これまで福岡県内で建て替えが実施されたのは、わずか7棟のみ。建て替えには莫大な費用や、住民の8割の合意など諸条件が複雑なため現実的ではありません。マンションはきちんと維持管理すれば100年は保つと言われており、建物の長寿命化策に目を向けることが大切です。
「自分はもう年だから、マンションも大掛かりな改修はしなくてもいい」と思いがちですが、マンションの価値を高めることは自分の資産を高めること。相続人がいる人はもちろんですが、誰にも継がないという人こそマンションの資産価値を高める必要があります。例えば自力での生活が困難になった場合、自宅を売却し施設等へ移ることが想定されますが、その際にいくらで売却できるかどうかはマンションの状態に左右されます。また、賃貸に出す場合も借り手がつくかどうかは、売却時と同様にマンションの状態によります。
また、大規模修繕工事の際は現状維持を目指すだけではなく、時代に応じた設備の改修も物件価値を高めていくことにつながります。
■大規模修繕工事 成功のポイント
①管理組合の意識UP
受動的にマンション管理を考えるのではなく、経営的感覚で主体的に取り組む。
②大規模修繕工事の計画、資金計画の見直し
③建物の現状確認
どの部分をどの程度改修するのか、業者任せにならないよう現状の確認をする。
④修繕委員会の早期立ち上げ
通常の輪番制で回ってくる管理組合の理事だけでは対応できないことも。
プロジェクトとして委員会の立ち上げを行う。
取材協力・監修
NPO法人 福岡マンション管理組合連合会
理事長 畑島義昭さん
(マンション管理士・管理業務主任者)