世界三大珍味の一つにフランス料理のフォアグラがあります。餌を過剰に与える特殊な飼育法でガチョウやアヒルの肝臓を肥大化させた高級食材です。脂肪肝は、まさにこのフォアグラと同じ過食が主な原因です。肝臓に脂肪がたまりフォアグラのようになってしまうのです。
従来、脂肪肝は軽い病気とされていました。しかし、現在は肝硬変や肝臓がんにつながる病気ということがわかっています。かつて肝臓がんは90%がB型肝炎・C型肝炎ウイルスの持続感染が原因でした。しかし、2000年代に入ってから糖尿病、肥満そしてアルコール過剰摂取など食生活が原因となり肝臓がんを発症する患者さんが増えています。
実際、食生活の変化により人間ドッグ受診者の3人に1人が何らかの肝機能異常を指摘され、その多くが脂肪肝と考えられています。ただし、脂肪肝のうち10~20%が将来的に肝硬変、肝臓がんになるリスクを抱えているのですが、それ以外の人たちは、あわてて病院に行く必要はありません。
つまり危険な脂肪肝と許せる脂肪肝があるのです。では危険な脂肪肝はどうすればわかるでしょうか? 私たち医師は4点に気を付けてほしいと呼びかけています。まず血液検査などで血小板が減少している例。これは物言わぬ臓器である肝臓が硬くなり、肝臓内に血液が流れにくくなっている可能性があります。さらに血液検査でAST、ALTの値が高い人も要注意です。次に糖尿病のコントロールが不良の人、最後に肥満の4点です。心当たりのある人は精密検査の受診を勧めます。
特に肥満には隠れ肥満があります。身長と体重から割り出すボディマス指数(BMI)が標準であっても気をつけてください。痩せ型だった人は若い頃の体重より5キロ以上増えた人はBMIが標準であっても脂肪肝になっている可能性があります。
それでは危険な脂肪肝にならないようにするにはどうしたらよいのでしょうか? まず生活習慣の見直しです。糖質、脂質、アルコールを控えめにした食事療法と脂肪燃焼効果が期待できる有酸素運動療法です。有酸素運動はウオーキング、ジョギング、水中運動などがあり、20分程度の無理のない運動を継続して行うことです。脂肪肝は一時的に改善しても油断すると再度悪化しますので継続が重要です。悪い生活習慣を断ち切ることから始めましょう。
担当医
福岡市民病院
診療統括部長
肝・胆・膵センター長
小柳 年正先生