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ハットをかざして 第121話 馬場当先生

ハットをかざして 第121話 馬場当先生

中洲次郎=文 やましたやすよし=イラスト


中々、何を書いても、馬場先生から褒められなかった。「中洲くんのは、シナリオではありません、ストーリーですよ」。まるで映画「愛妻物語」での宇野重吉(新藤兼人)が、滝沢修(溝口健二監督)から叱られているようだった。

どうもストーリーとシナリオの違いが分からない。ストーリーが無ければ話は進まないはずだ。どうすればストーリーでなく、シナリオが書けるのか。
「先生、ストーリーとシナリオの違いが私にはまったく分からないのですが…」
「ストーリーは書くのです。シナリオは描くのです。シナリオとは台詞なのですよ。台詞が磨かれていれば、ト書きも何にも要りません。台詞がストーリーを生み出し、人を顕し、話を展開し、前に進めていくのですよ」

ストーリーは書く、シナリオは描く、それでもよく分からない。「台詞が凄ければ、ストーリーを越えるのです。」と、遠くで先生が力説しているが、そのメソッドが、方法が分からない。
「映画は①にホン(脚本)、②にキャスト、③に演出です。ホンが優れていなくては、どんな名監督が撮っても優れた作品にはなりません」

黒板に、アバン(掴み)、ファーストシーンへの導入、登場人物の自然な紹介、伏線、事件、葛藤、クライマックス、ドンデン、着地の余韻と、構成が書きだされていく。
「常に観客を裏切ること、客に先を読まれたのではお終いです。アバンでワクワクさせ、山場までを伏線で焦らし、最後に良い裏切りをする。すると客は面白かったと満足して席を立つ。説明はダメですよ。登場人物の性格も問題も、すべては行動と仕草と台詞で伝えるのです。台詞と伏線に知恵を絞りましょう。」

提出した「橋」の感想に入った。私も元刑事も俎上には上らなかった。

私のストーリーは、中学時代に体を売っていた同級生の女子の話を書いた。放課後、学校の廊下で男子生徒の袖を引き、近くの川の橋の上流の葦の繁る岸辺で体をひさぐ。男子たちは嫌がり、結局、いつも高校生のお兄さんたちを相手にしていた。ある日、学校の便槽に嬰児が落ちており、事件となり、その子が母親と町から居なくなるまでを書いた。主人公の少年はその橋を通るたびに消えた女子のことを思い出す。とそんな内容である。和泉雅子の「非行少女」(浦山桐郎監督)に多分に影響されていた。元刑事は県境に掛かる橋である。都会でヤクザを刺した少年が、きっと母親の待つ実家に戻ってくると、橋のたもとにあるボート小屋に張り込んでいる刑事の話である。橋のそばには貧しい少年の実家がある。少年の母と祖母の人となりも語られている。少年の生い立ちに同情を持った刑事の話だった。どこか、「張込み」(野村芳太郎監督)を思わせた。

先生がまた遠くで喋り始めた。
「ここを出たジェームス三木さんは、台詞を端から会得していましたね。それだけにああいう大それた筆名にしたのでしょう」

小津安二郎監督の脚本家ネームが「ジェームス槙」だったことは後で知った。

中洲次郎
昭和23年、大分県中津市生まれ。
博報堂OB。書評&映画評家、コラムニスト、エッセイスト。
RKB毎日放送「今日感テレビ」コメンテーター。
近著「伊藤野枝と代準介」(矢野寛治・弦書房)
新刊『反戦映画からの声』(矢野寛治・弦書房)

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