年を取ると、筋肉の量が減って筋力が低下します。
一般に筋肉の量は30歳のときがピークといわれます。仮に30歳の時を100とすると、65歳の男性は65程度に、女性は70ぐらいに低下します。つまり高齢者は若い時と比べて筋肉の量が3~4割減るわけです。
筋肉量の減少は例えば①歩く速さが遅くなる②段差のない場所でつまずく③階段の上り下りで手すりが必要になるーなど日常生活の基本動作に影響が生じて転倒しやすくなったり、介護が必要になったりします。こうした状態は「サルコペニア」と呼ばれ高齢者の活動能力が低下する大きな原因とされています。
しかし、むやみに心配する必要はありません。高齢者でも日々の運動で筋肉をつけることは可能です。軽いトレーニングで筋力をアップさせ、腰痛やひざ痛などがよくなったり、糖尿病などの生活習慣病が改善したりすることも期待できます。
筋肉をつける運動としては手足を心地よく伸ばすストレッチ運動や、両足を肩幅程度に開いて3~4秒かけてゆっくりと膝を曲げるスクワットなどが効果的です。きつければ、机やいすを使っても構いません。腕立て伏せも有効ですが、負荷がかかりすぎないよう、ひざをついて行う方法もありです。
筋トレ効果を高めるには有酸素運動も重要です。中でも日光を浴びながらのウォーキングはおすすめ。健康維持には「一日1万歩」などと言われますが、1万という数字にこだわる必要はありません、5000歩でも6000歩でも大丈夫ですよ。
高齢者の筋力トレーニングは、食事と同じように「腹八分」を心がけてください。回数や量ではなく、どこの筋肉を鍛えたいのか、目的をはっきりさせた上で、一日15~30分程度で構いません。「ちょっときついな」と思ったら、無理せずにやめてください。
最近はスポーツジムに通う中高年の人が増えていますが、日ごろ運動をしていない人がいきなり激しい筋トレをやってけがをしてしまうことがあります。60代の人が30代の時と同じような筋トレをやるのは危険です。
無理なくゆっくりやることが、筋トレを長く続けるコツだと思います。
協力:福岡市医師会
担当医
大木整形・リハビリ医院理事長
大木 實(おおき みのる)先生