さあ冒険だ
シニアになると平日に丸一日オフになることが多くなった。家にいても家人から邪険にされるだけなので出かけるようにしている。最近実行しているのが、何も持たず「おにぎり」と「お茶いりポット」だけを持参する冒険散歩だ。“何も持たず”については、自分なりに厳しい戒律を課した。行くと決めた日には雨が降ろうが必ず行く。さらに腕時計、携帯電話、財布も持たない。
今回実行したのが、室見川遊歩道をぶらりぶらりと歩くだけの冒険散歩だ。川のせせらぎ、野鳥の鳴き声、風に乗っていろんな香りも感じることができる。無目的のはずだが、脳内でいろんな思いがよぎる。若いころにやらかした仕事の失敗、最近気になる女性タレント、まだ読了していない本の結末…。
「これって何かに似てねえ?」と自問自答してみた。ずっと昔体験ルポを書くために行った「内観」教室だった。大阪大学の教授が主宰した教室で、一日中部屋に一人こもり過去の出来事を思い出すだけの内容だったが、その後の人生で何をすればいいのかを認識できた気がした。こうした冒険散歩も続ければ、私も少しまともな余生を送ることができるかもしれない。
空腹感を覚え、持ってきたおにぎりとお茶でお弁当タイムにした。最近、家にこもることが多くすっかり忘れていたが福岡市内は桜が満開の季節となっていた。平日のお昼前なので、人は少なかった。薄桃色の花が咲き誇った桜の木の下にあったべンチに座っておにぎりをほうばった。実は一人で行きたかったが「ぐらんざ」のこのコーナーには写真がないと寂しいのでカミさんに写真撮影の応援を要請していた。それが今月号の写真だ。
原稿を書きながら思い出した歌があった。息子たちが小学校入学前、朝から放映されていた幼児番組で流れていた曲だ。森高千里作詞、カールスモーキー石井作曲、和田アキ子歌唱の「さあ冒険だ」という曲だ。メロディーがビートルズ風で森高さんの歌詞にも自由な雰囲気があり、すぐにお気に入りになった。
〽️晴れた日は出かけようどこか遠くへ/知らないとこ目ざして歩いていこうーで曲は始まる。家の中にいても/そうだつまんない/犬に道をきけば/どこへでも行けるーの歌詞もあった。ちょうど、散歩中のわんちゃんがいたので、歌詞の通りに道を聞こうと近づいたら思いっきり吠えられた。それでも気分はよかった。歌を口ずさみながら散歩を続けた。さあ冒険だぁ…
文・写真岡ちゃん
ぐらんざ世代の代弁者としてnoteなどで発信。
代筆屋業も開業しスピーチ原稿などの執筆や情報誌編集長としても奮闘中。