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岡ちゃんのきまぐれ散歩術 15

岡ちゃんのきまぐれ散歩術 15


富士山に登ってみた —五合目だけど

 大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」にも登場する、江戸後期の浮世絵師・葛飾北斎。彼が生涯をかけて描き続けたモチーフのひとつが「富士山」だった。

 学生時代は東京で過ごし、社会人になってからも出張で何度も飛行機や新幹線から富士山を〝眺めて〟きた。ある日、妻が「死ぬまでに一度、富士山を間近で拝みたい。できれば登ってみたい」とまるで遺言のようなことを口にした。

 「富士山なんて見るものであって、登るもんじゃないだろ」と返しつつ、しぶしぶ予定を立てることに。このコラムの〝コンセプト〟にも合わせなくてはならない。あくまで、きまぐれ散歩だった。「登山じゃなくて散歩だよな?」と心の中で屁理屈をこねていたが、正直、楽をしたかっただけの面もある。そこで思いついたのが、東京観光の定番「はとバス」だ。

 同世代の友人が「はとバスで東京巡ったら、すごく楽しかった」と言っていたのも思い出し、五合目まで行ける日帰りツアーを予約。「いざ、日本一の山へ!」と気合を入れたものの、前日は大荒れの天気。ツアー催行すら危ぶまれた。

 当日、東京駅を早朝に出発。空はどんより、雲は厚く…。案の定「日頃の行いが悪いからでしょ!」と妻の鋭いツッコミが飛んできた。だが、バス旅は快適。皇居や国会議事堂のそばを抜け、バスガイドさんの軽快なトークに笑いつつ中央道へ。

 やがて、富士山が近づいてくると、雲の切れ間からスロープ状の山肌がはっきりと姿を現した。その瞬間、ちょっと感動した。やっぱり富士山って美しいんだ。頂上付近にはうっすら残雪も見え、北斎が夢中になった理由もよく分かった。

 五合目では、霧が晴れたりまた立ちこめたりを繰り返すなか、周囲をぶらぶら散策。下山時には雲海も見えて、絶景に圧倒された。

 気がつけば写真を撮るのも忘れるほど楽しみ、残っているのは五合目の看板の前で撮った「万歳」ショットだけ。でも、それでいい。五合目までだったけど、死ぬ前に登ってよかったと思える一日だった。

文・写真岡ちゃん

ぐらんざ世代の代弁者としてnoteなどで発信。
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ライターとして活躍中。

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