風邪やインフルエンザは、鼻・喉など上気道の炎症。これに対して気管支や肺などの下気道まで炎症が及ぶものが肺炎です。
肺炎の原因で最も多いのは肺炎球菌という菌です。その他マイコプラズマやインフルエンザ菌(※インフルエンザウイルスとは異なります)などが多くみられ、コロナやRSウイルスなどのウイルスによるもの、真菌(カビ)や結核菌などによるもの、間質性肺炎や器質化肺炎といった特殊な肺炎もあります。
症状としては、発熱、咳、痰などの風邪症状の他、倦怠感や食欲不振、脱水症状が出ることもあり、さらに進行すれば肺から酸素を取り込む機能が低下するため血液中の酸素濃度が低下して息苦しく呼吸困難になります。これは指先で測定する酸素飽和度が低くなることで予測できます。さらに重症になると、血圧の低下や意識がもうろうとなるなどショック状態となり、命に関わることもあります。コロナもデルタ株の頃は重症となる人も多くみられましたが、現在の株は上気道炎にとどまることが多くなっています。
治療方法は原因によりさまざまで、菌が原因の場合は主に点滴や飲み薬の抗生物質、ウイルス性には抗ウイルス薬を用います。菌やウイルスが原因でない特殊な場合は、ステロイドなどの専門的な治療が必要になります。軽症の場合は外来でも可能ですが、重症であれば入院して酸素投与や人工呼吸器などの集中治療が必要となることもあります。また、結核は痰の中に菌が検出されれば、専門の施設で隔離治療しますので、まずは痰の検査による原因の確定が重要です。
肺炎の予防は、栄養をしっかり取る、体を動かし抵抗力をつけること。もちろん禁煙は重要です。そして重症化を防ぐために、ワクチン接種も重要です。肺炎球菌ワクチンは、5年ごとに接種して下さい。インフルエンザやコロナのワクチンは、流行に応じたものが接種できます。コロナウイルスXBB株に対する接種も始まっています。
他に、口腔ケアを行って口の中を清潔にすること、嚥下リハビリテーションを行い、食べ物や分泌物の気管への侵入を防ぎ、誤嚥を予防することも大切です。
高齢者は症状が出にくいこともありますが、食欲がない、口が乾く(脱水)は要注意です。風邪と思い込まずに肺炎の可能性を考え、医療機関を受診しましょう。
担当医 小舘医院 副院長
小舘満太郎(こだて まんたろう)先生
協力:福岡市医師会