2017年10月のオープン前から「福岡市科学館 開館準備室 館長」として尽力した伊藤館長。趣味は旅行、ハイキング、将棋、読書。
九州大学の教授として福岡の地へ来たのは’98年。以降、理学研究院で気象学を専門としていた伊藤さんは、お世話になった福岡に恩返ししたいという気持ちもあり福岡市科学館の館長を引き受けた。出身地である京都のなまりが、取材の場を和ませてくれる。
「科学館で働くようになってから、考え方がものすごく柔軟になったと思います。人に関しては柔らかい方ですが(笑)、自分の専門である科学に関しては少し固い考え方を持っていたなと」。そう言って伊藤館長はある調査結果※を見せてくれた。理科が好きな小学6年生と中学3年生の割合は、後者になると下がるものの小学6年生は83.5%と高い割合を示している。それを受けた伊藤館長の考えとは?「人類は元より自然から食料を得なければならなかったので『自然を知る、探る』ということは生きるために必須だったと思うんです。赤ちゃんが周りを探るというのも人が本来持つDNAのようなもの。子どもは理科(=科学)が好きという事実はそこから繋がっているのではないでしょうか。以前の私は、人間の高度な知能があって初めて科学ができると思っていたのですが、そうではなく、本能が科学をさせているという考え方に変わりました。科学は生きることそのものであるということを科学館が工夫して伝えていけば、もっと科学に親しみを持ち、日々の生活の場面で使えるようになるのではと思います」。
日々、利用者の声を大切にしながら新しい科学館を創っていきたいという伊藤館長。
まだ伸びるものを沢山持っているという科学館と同様、自身も未だ成長過程にあり、多方面に関心を持てる人になりたいと話す伊藤館長。ちなみに彼は、自他ともに認める愛妻家。「仲の良い秘訣は、奥さんを尊敬していること。いつも人に優しくて、一緒にいると学ぶことが多いんですよ」と、このとき一番の笑顔を見せてくれた。
福岡市科学館は「人が育つ」ということを何よりも大事にする。「今後は人に寄り添い、他をリードしていけるような新しい科学観●を打ち出していきたいです。当館に来て下さるリピーターの内8割以上もの人が、アンケートに単なる『満足した』ではなく『感動した』と答えてくれます。そこには展示やサイエンスショー、プラネタリウムなどの中身だけでなく、お客様への対応も含まれているんです。やっぱり人っていうのは科学館の中で大事だなと思いますね」。そんな人間味あふれる科学館へ、ぜひ足を運びたい。
科学館では、大人でも家族や友人とともに童心に返って体感することが楽しむポイント。
※平成27年度全国学力・学習状況調査より