路地裏の散歩者になったぜ!
65歳は高齢者の範疇に入るらしいが、自分はそんな気がさらさらしていない。むしろ、会社という組織の呪縛から逃れ、背負っていた重い荷物を降ろして気楽な学生気分で過ごしている。一方で、同年輩の読者なら分かるだろうが物価高の影響で年金だけでは生活できない。孫におもちゃを買ったり友人たちと居酒屋で安酒を酌み交わしたりするためにはパートで働く必要があるし、実際に働いている。私のようなシニア(今後もあえて高齢者とか年寄りとは表記しない)ならわかってもらえるだろう。
そんな時だった。3人の息子たちからアップルウオッチをプレゼントされた。長年、安価で誤差がほとんどない国産の腕時計を身につけてきた。それだけに心拍数をはじめ「ヘイ、シリ」と時計に向かってつぶやけば色んなアプリが使え、指導までしてくれる。しかも、セシウム原子時計などを搭載した地球軌道上のGPSと正確に時刻同期をしている。時計機能の誤差は30万年に1秒以下しか生じないそうだ。
アップルウオッチの機能に驚いていても仕方がない、閑話休題。プレゼントを生かすためにほぼ毎日、散歩の記録をスマートフォンのアプリに残すようになった。実はアプリを起動しなくても、少し長く散歩していると時計が振動し「いま、ワークアウト(トレーニング)中ですか?」と聞いてくる。シニアになり、何もすることがなくなったらどうしようなどと考えていたのが杞憂に終わった。時計にせかされ何かと忙しい日々を送っている。
毎日散歩していると、まず道端のゴミが気になるようになった。自分の足の運びも気になる。繁華街を歩けば安そうな居酒屋も目に付く。何より飲酒歩行をしても、よほど周りに迷惑をかけなければ法に触れない。角打ちに飛び込んで少々酔って帰ってもカミさんには叱られまいとも考える。
散歩の効用として、長い距離を歩いていると色んな思いが脳裏をよぎることにも気がついた。路地裏で思いついたアイデアや考えを歩くたびに捨て去るのはもったいないと感じていた時に、ぐらんざ編集長から「隔月でいいからコラムにしませんか」とオファーをいただいた。江戸川乱歩の「屋根裏の散歩者」ならぬ「路地裏の散歩者」として、きまぐれ散歩術欄に様々な情報を発信していきたい。
文・写真 岡ちゃん
ぐらんざ世代の代弁者としてnoteなどで発信。
代筆屋業も開業しスピーチ原稿などの執筆や情報誌編集長としても奮闘中。