より人間的なテーマで放ったプログレッシブロックの極致
世界的に大ヒットした「狂気」の発表後、一気にスターダムに登り詰めたメンバーは富と名声を手に入れた反動で創作意欲を失い、バンドは破綻した状態で次作のテーマも決まらずもがき苦しんでいた。
見かねたロジャー・ウォーターズが元リーダーで引退したシド・バレットに想いを寄せて前後2部にわたる「狂ったダイアモンド」を作曲し、これに挟まれる「ようこそマシーンへ」「葉巻はいかが」「あなたがここにいてほしい」を完成させた。
前作「狂気」は、人の心の奥底に潜む狂気を、エフェクトを駆使して炙り出すシリアスなストーリーで描き、一時は彼らが近づくこともできない神の様な存在に思えたが、ここには人間味溢れる世界が広がり、同じ世界にいる安心感を与える。ただ音はよりストレートで説得力を増している。ビジュアルはヒプノシスによるジャケットデザインが施される。握手する男の一人は燃えている。裏面は砂丘に立つ透明人間が、そしてスリーブには下半身を突き出して水に潜っている人が、という意味深長な写真で問題提起し、濃紺のラップで覆うという非常に凝ったものであった。
この作品は、現在ソニーミュージックから輸入アナログ盤としても発売されている。濃紺のシュリンクパックなどオリジナル発売当時の記憶が蘇る!
相川 潔
元広告会社社員・長崎市生まれ熊本市在住。
ジャズ、ロック、ソウルなどのレコードを追い求めて数十年。名盤、奇盤多数。
レコードは盤、ジャケット、再生機を含めて楽しむべき芸術だと思います。