人の腸内には1000種類以上、100兆個のさまざまな種類の腸内細菌がすみ着いています。その多くは人に良い影響を与える乳酸菌などの善玉菌ですが、反対に人に悪い影響を与えるとされている大腸菌などの悪玉菌も含めさまざまな種類の菌も共存しています。さまざまな腸内細菌は活発に働いて、グループを作ってすみ着いています。電子顕微鏡で見るとお花畑のように見えます。これを腸内フローラ(細菌叢(さいきんそう))といいます。
こうした腸内環境を整えるのに最も有効な方法とは、何でしょうか。ずばり生活習慣を整えることです。体や筋肉が動くことで腸内にたまった便などを動きやすくする軽度の運動。結腸などへ便を規則正しく送ることができるようにする十分な睡眠。十分な食物繊維と水分摂取に加えて理想的な排便を促すための朝食摂取です。この3つの条件を満たすことで腸内環境を整えることができます。
あまり意識されていませんが、腸は〝内なる外〟として常に外界(外敵)と接しております。腸には外界刺激を敏感に感じるセンサーがあり、体に必要な栄養は受け入れる一方で、体に不要なもの、有害なものは体外へ排除しています。間違って特に有害なもの食べてしまった時に、急に嘔吐(おうと)や下痢がおこるのは、腸が前線で体を守っているからです。
こうした腸の毎日の働きによって体本来が持っている免疫機能も維持、強化されています。さらに第一線で働く腸は脳と神経と通じて密に連携し、腸は脳を介して体全体のバランスをとっています。腸内フローラの乱れはさまざまな病気につながります。がんをはじめ、糖尿病、アレルギー疾患、そしてごく最近ではアルツハイマー病や自閉症といった脳の病気とも関連性があることがわかり注目されています。
こうした機能を持つことから腸は〝第二の脳〟とも呼ばれています。腸内環境を整えることは良いことだらけなのです。
担当医
九州大学大学院医学研究院
消化器代謝学講座(第三内科)
伊原 栄吉准教授
協力:福岡市医師会