病気も込みで人生
このところ体の不調が続き、少し立ち止まってこれからの生き方を考えたいと思っていた時、曽野綾子さんの『病気も人生不調なときのわたしの対処法』という本を書店で見つけた。「冷凍食品やレストランの食事を食べつづけて健康が保てるわけがない」「健康を気にしすぎる病もある」「病気も込みで人生」「病気とつきあわなければ病気はなかったことになる」。本に書かれたこれらの言葉に触れて、とても気持ちが楽になったのである。「病気も込みで人生」という90歳に近い著者の哲学は、非常に心にしみた。
ある時、夫の朱門さんにそのころの筆者の怪我や体の不調を案じて、仕事でのアフリカ行きをそれとなくやめるように提案された時、彼女はかねてから信頼している夫の主治医に相談に行ったのである。その時の主治医の言葉を私は生涯忘れないであろう。「自分は人間が死ぬことはほとんど気にしていない。誰でも必ず死ぬからだ。しかし生きている人間の生活の質は本当に大切だと思う。だからアフリカに行ってらっしゃい。ただ怪我をすることと風邪をひくことだけは防ぐように」。筆者は、その時の思いを「こんな爽やかな日はなかった」と書いている。また夫の主治医は名医だとも。
この本を読んで私はこれからの生き方が定まったと思う。本は必要な時に必要な言葉を読む者に届けてくれる。
●『病気も人生―不調なときのわたしの対処法』
曽野綾子 著
興陽館
1,100円
六百田麗子
昭和20年生まれ。
予備校で論文の講師をする傍ら本の情報誌「心のガーデニング」の編集人として活躍中。