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長谷川法世のはかた宣言65・勉強記

長谷川法世のはかた宣言65・勉強記


貞観11年の博多湾おさがわせ海賊事件※1について、知りたいことは最小限、ふたつ。

⑴運脚※2の姿
⑵盗まれた豊前国の絹綿の量

前々回、運脚の姿を想像して、背負子で荷を運ぶイラストを描いた。山小屋に荷を運ぶ強力なんかを思いおこして描いたのだけれど、もうひとつ参考にしたのが、英国婦人イザベラ・バードの本、『日本奥地紀行※3』。明治11年、横浜から北海道まで、従者兼通訳の伊藤(18歳)だけをつれた、47歳の外国人女性の日本旅行記だ。

その中に、運脚ってこんなかなとおもう背負子の描写がある。時代がとっても離れているが、とりあえずご紹介。

「人夫は、一人で約五〇ポンド運ぶ」

これはバードが山形県の山間部を旅したときのことだ。50ポンドは約22.7㎏※4だから、ちょっと軽い気もする。

「これら荷物を運ぶ人たちは、編んだ藁の厚い当て物を背中に着込んでいた。梯子をその上にのせてあり、その下端は橇のすべりのように反り上がっている。この上に荷物をていねいに積み込み、腰の下から頭上かなりの高さにまで至る。その上を油紙でおおい、紐でしっかり結び、蓆をかぶせる」

梯子というのは「背負子」のことだろう。二宮金次郎が背負っているあれだ。手持ちの辞典類※5と見出し語を、古い順にならべてみる。

①しょいこ(背負子)=『大辭典』(S11)上下各3.2㎏
②しょいばしご(背負梯子)=『民俗学辞典』※6(S26)
③せおいばしご(背負梯子)=世界大百科事典(S47)1.6㎏
④せおいばしご(背負梯子)=『図説民俗探訪事典』(S58)
⑤しょいこ(背負い子)=大辞林(H7二版)3㎏
⑥しょいこ・せおいばしご(背負子・背負梯子)=広辞苑(H20)
⑦しょいこ(背負い子)=明鏡国語辞典(H14~H20)
⑧せおいばしご(背負いばしご)=ブリタニカ国際大百科事典(H20)。

以上、見出し語が「しょいばしご」なのは、民俗学辞典だけ。③は、見出し語は「せおいばしご」だけれど、別名〈しょいばしご〉(関東地方)と解説する。⑤大辞林は別名を「背負い梯子ばしご」とかく。「背負い」はどうよむのかわからない。

不思議でしょ、しょいばしごと、せおいばしご。②のほかは見出し語「背負い梯子」がすべて、「せおいばしご」となっているじゃないすか。②「しょいばしご」の『民俗学辞典』は、解説の参考資料に、柳田国男「村と学童」(昭20)をあげている。そもそも柳田先生は日本民俗学の樹立者だ。この辞典の著作権者は、先生が創始した日本民俗学会なのだ。その権威が背負い梯子を「しょいばしご」とかくのに、③以下がすべて「せおいばしご」ってのはどうしてなんだろう。って、背負い梯子の読み方がテーマじゃなかったんだ。

こないだ、「尋章摘句」ということばを知った。章を尋ね句をつかむ。えっと、木を見て森を見ずと同じ、細かいことばっかこだわって全体がおろそかになるということ、ですと。自戒。
もう一つのテーマ、⑵盗まれた豊前国の絹綿の量も知りたいけど、そのまえに書きたいことがあるんだな。次号は博多山笠、追い山の話を。

*1)海賊事件…貞観11年5月22日(日本三代実録)

*2)運脚…税物を都まで運ぶ力役。

*3)『日本奥地紀行』…イザベラ・バード:高梨健吉訳:平凡社ライブラリー209頁~。1878年(M11)、東京から北海道まで旅した紀行文。このあと5回ほど来日。

*4)約22.7㎏…1ポンド=約453.6g。同じ山道を「商人たちは、実際に九〇ポンドから一四〇ポンド、あるいはそれ以上も運」ぶ。目は飛び出しそうで、虫を追い払えないから、食われた傷口から血がしたたり落ち、裸の体中に血と汗が文字どおり流れていた。かれらは家族のため真面目に生きているのだ、と書いている。女性は七〇ポンド担いでいたとも。

*5)手持ちの辞典類…手持ちで一番古い『言海』(S6)は、旧仮名が難しい(せうばい=商売など)。延べ10時間調べて見つからない。チベット語の字引きと同じだ。

*6)民俗学辞典…民俗学研究所編著:東京堂

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