丑の日だけ? 鰻は疲れた時の救世主
「丑の日」に食べるものといえば、多くの人が「鰻」をイメージするのではないでしょうか。
おいしいだけでなく、昔から精をつける食べ物として親しまれている鰻。実際にどんな栄養素が含まれているのかご存じですか?
実は鰻は「年に数回」の特別食にしておくのはもったいないくらい、体にうれしい栄養素が豊富。日常食としては少し値が張りますが、寝ても疲れが取れなかったり、だるさや食欲不振などの症状を感じたら、1年中積極的に取り入れたい、おすすめの食材なのです。
今年の夏の「土用の丑の日」は、7月24日と8月5日。店頭には鰻がたくさん並んでいます。たまには専門店でいただくもよし。手軽にスーパーで調達するもよし。よりヘルシーに、よりおいしく鰻を味わい、心も体も元気に、暑い夏を乗り越えましょう。
うなぎ雑学
■鰻の歴史 いつから食べている?
文献に登場するのは風土記や万葉集ですが、そのはるか昔、約5000年前の縄文時代の貝塚から食べた形跡のある鰻の骨が発掘されています。蒲焼きとして食べられるようになったのは室町時代からで本格的に蒲焼きが定着し始めたのは江戸時代だそう。
■「鰻に山椒(さんしょう)」には ワケがある
脂がのった鰻は、胃もたれしやすい食べ物です。山椒にはピリッとした辛味や風味の魅力もありますが、胃腸の機能を高める効能があり、消化を助け胃もたれを防ぎます。とはいえ、最高級の鰻を食す時は山椒なしで鰻本来の味を楽しんで。
■関東と関西 捌き方が違うって本当?
関東は背開き、関西は腹開きです。武士道精神が根付いた昔の関東では、腹開きは切腹を意味することから良くないこととされました。一方、商人の町の関西では「お互い腹を割って話をしよう」という意味合いが捌き方に反映されたといわれています。
日本人の"元気の源" 鰻の魅力を大解剖
■【栄養】魚にあまり含まれないビタミンA、ビタミンB群も豊富 鰻に含まれる栄養素と 体に嬉しい効果
筋肉の素になる タンパク質
臓器や筋肉など体を構成する。
若さのビタミン ビタミンE
強い抗酸化作用があり、血管を健康に保つ働きもある。
必須脂肪酸 DHA・EPA
脂肪燃焼や血液・血管の健康に関わる。
保湿効果が高い コラーゲン
肌のハリを保つ美容効果のほか、関節の動きを滑らかにし、丈夫な骨づくりに役立つ。
骨や歯をつくる カルシウム
ストレスを和らげ、血が固まるのをサポートする働きも期待できる。
体の調子を整える 亜鉛
体の成長と維持、味覚に関わる。免疫システムの働きを高める働きも。
免疫力を高める ビタミンA
皮膚や粘膜、目の健康を維持する。
歯や骨を丈夫にする ビタミンD
カルシウムの吸収を促進する。
疲労回復に役立つ ビタミンB群
糖質を代謝するビタミンB1が豊富。ビタミンB2は脂質をエネルギーに変える際に使われるほか、皮膚や髪、爪などを健康に保つ手助けも。
■体に良いからと油断は禁物!よりヘルシーに 食べよう
ビタミンC・食物繊維が 豊富な野菜と食べる
鰻にはビタミンCや食物繊維はほとんど含まれていません。副菜に野菜やキノコを入れた汁物、食後にフルーツなどを取り入れるとGOOD。
血糖値が気になる人は うな丼、うな重を控える
良質の必須脂肪酸が多いとはいえ、ほかの魚に比べてカロリーは高め。うな丼やうな重は、お米の糖質の影響で血糖値が上がりやすくなり注意が必要。
栄養価は高くても まとめ食いはNG
鰻に含まれるビタミンA・ビタミンDは体内に蓄積されやすいので、一度に多くの量を食べたり何日も続けて食べたりすると、過剰摂取による悪影響が出ることも。
■1尾でおぎなえる 多様で豊富な栄養素
年齢を重ねると、若い頃に比べて食事量が減り、食べるメニューも偏りがち。そんな食生活を送っていると、慢性的にタンパク質やビタミン、ミネラルが不足する傾向にあります。
鰻には魚肉特有の良質なタンパク質に加えて、一般的に魚肉類に不足しがちなビタミンA、ビタミンB₁などのビタミンB群もたっぷり。
さらにぐらんざ世代に不足しやすいカルシウムや鉄、亜鉛などのミネラル、体内で生成できない必須脂肪酸のDHA、EPAなど、健康を維持するために役立つ栄養素が豊富です。
また、最近特に注目されているのが皮周辺に含まれる良質のコラーゲン。元気と若さをキープするのに欠かせないタンパク質の一種で、女性にとっても魅力的なスタミナ食材なのです。
【美味】鰻は全ての部位が食べられる!鰻料理を楽しむ
■刺身
血液中に毒があり通常は生食できないが、職人の精巧な血抜きの技術があれば刺身も可能。味は淡白でポン酢との相性が良い。
■白焼き
調味料やタレなど他の添加物を加えずに直接火にかけて焼き上げる調理方法。白焼きではなく、素焼きと称されることも。
■肝焼き
鰻の肝とは胃を中心とした内臓のこと。上質な脂肪分と柔らかい食感が魅力。一匹に一つしかないので高級な食べ方と言われる。
■肝吸い
鰻の肝を実としたお吸い物のこと。うな丼やうな重と共に食す汁物として飲食店で提供される。肝の部位は胃を中心とした内臓。
■骨の唐揚げ
鰻の骨に衣をつけて唐揚げにしたもの。カルシウムやビタミンなどの栄養素が豊富。クセになる素朴なおいしさでおやつにぴったり。
■くりから
さばいた際に出た端肉やヒレなどを串に巻きつけて焼いたもの。タレ焼きが一般的。鰻のわりにリーズナブルで密かに人気。
■知っているのと 知らないとでは大違い 蒲焼きのおいしい 温め方
【ふっくら】電子レンジ
①酒をまんべんなく身に振りかける(大さじ1~2杯ほど)
②皮目を下にして耐熱皿に並べる
③付属のタレをかけてふんわりとラップをかけ、500Wで1分30秒~2分30秒を目安に温める
【香ばしい】フライパン
①事前にフライパンを温める
②皮目を下にしてフライパンに並べる
③酒をまんべんなく身に振りかける(大さじ1~2杯ほど)
④中火でふたをして2~3分蒸し焼きに
⑤火を消して付属のたれを加え、余熱でタレを温める
【香ばしい】魚焼きグリル
①事前にグリルを温める
②酒をまんべんなく身に振りかける(大さじ1~2杯ほど)
③アルミホイルで軽く包んで3~5分焼き、アルミホイルを広げて両面を約1分ずつ焼く
④好みで付属のタレをかける
おいしい 楽しい アレンジ
キュウリと一緒に甘酢であえたら「うざく」に、卵で巻いたら「う巻き」に。ひと口大に切った蒲焼きを温かいご飯に混ぜて大葉とゴマを散らしたり、酢飯との相性もいいのでちらし寿司の具にもぴったり。
栄養価は高くても 気になるカロリー
同じ鰻でも、料理の仕方によりカロリーも変わります。蒲焼きがじっくりと焼き上げ余分な脂を落として調理されるのに対し、白焼きは蒲焼きほどじっくり焼かず一度焼きで仕上げます。そのため味の濃い蒲焼きが100gあたり228カロリーに対し、白焼きは331カロリー(※1)と高め。とはいえ、白米と一緒に食べることが多い蒲焼きはおのずと高カロリーになるのでご注意を。
また、鰻は良質な脂肪とはいえ脂分を多く含みます。消化不良を起こすリスクが高くなるため、大根、スイカ、イチゴなど水分量が多い食材とは相性が良くありません。食べながら水分を多量にとるのも避けましょう。口直しにはキュウリやワカメの酢の物がおすすめ。口の中をさっぱりさせてくれるだけでなく、鰻だけでは不足する食物繊維を補えます。
※1 日本食品標準成分表(八訂)増補2023年より