RSウイルス感染症は、風邪の一種でRSウイルスへの感染により引き起こされる呼吸器感染症です。1歳までに約70%が罹患する疾患(りかん)で、多くは一般的な風邪症状で治まりますが、時折、気管支の末端まで炎症が起きる細気管支炎になることがあります。免疫力が低い乳幼児は重篤な症状になる確率が高いので、1歳未満の検査は保険適用となっています。こどもだけの感染症と思われがちですが、風邪の一種ですから全世代の人が罹患する可能性があり、高齢者は呼吸機能が加齢により低下しているので注意が必要です。風邪症状が長引く場合や痰がからんだような咳、ぜーぜーという呼吸音の時は、自己判断せずRSウイルスの可能性を疑い医療機関を受診してください。
以前は、冬に流行することがほとんどでしたが、ここ数年は夏に多い傾向があります。酷暑続きでエアコン使用率が高く室内の空気が乾燥し、換気が不十分になっていることが要因の1つかもしれません。さらにコロナウイルス感染症が流行したここ数年、衛生的な状態を保っていたので、さまざまな感染症に触れる機会が減り、抵抗力が低下している人も多いようです。
予防方法としては、コロナウイルス感染症対策と同様に三密の回避や換気、手洗い、うがい、マスクの着用が有効です。神経質になりすぎない程度に生活習慣を見直すこともよいかもしれません。また60歳以上を対象としたワクチンもあります。特に慢性閉塞性肺疾患(COPD)がある人や悪性疾患の治療中である人は、RSウイルス感染症からつながる重篤な症状を抑制するためにも予防接種をおすすめします。
感染経路は一般的な風邪と同じですから特定はできません。こどもの場合は、幼稚園や保育園などの施設から、きょうだいがいる場合は家庭内での感染も多く見られます。過敏になる必要はないですが、小さいお子さんとコミュニケーションをとる場合、風邪症状があり体調がよくない時は接触を控えるなど、お互いの感染リスクを考えて思いやりを持った行動を心がけてください。
担当医
医療法人植山小児科医院
理事長
植山奈実(ウエヤマ ナミ)先生
協力:福岡市医師会