医療DXという言葉をご存じでしょうか? DXとは「デジタルトランスフォーメーション」の略で、さまざまな情報をデジタル化して新しい価値を生み出すことです。
DXは医療のみならず多くの分野で進んできています。医療DXはマイナンバーカードによるオンライン資格確認を入り口として始まっています。現在、ほとんどの医療機関でオンライン資格確認のカードリーダーが設置済みで、本格的な実用化の真っ最中です。今後は電子カルテの標準化などによって病歴やお薬、アレルギー歴や検査データなども医療機関の間で共有できるようになる予定です。その結果、初めての病院を受診した時や急患で搬送された場合でも、登録された情報をもとに安全に投薬や検査ができるようになると考えられています。
また、これらの情報をもとに新しい薬を開発することも可能になります。いろいろな分野でのDXは新しい産業革命とも言われて、日本が世界の中で生き残るために進むべき道筋と考えられています。
私自身は電子機器が苦手で、スマートフォンすらうまく使いこなせていないのですが、最近の子供たちは将来高齢者になっても、電子機器やデジタル情報を上手に利用できているのではないかと思います。テレビやラジオで情報漏えいや詐欺事件などのデジタル情報に関連する犯罪が頻繁に報道されているうえに、マイナンバーカードについても不具合が生じていて、自分の医療情報のDX化に不安を感じている人も多いと思います。
国はしっかりと不安を払拭する対策を示す必要があり、医療機関も医師会などを窓口として、正しい情報の入手と安全性の確認を行いながら医療DXを進めています。
スマートフォンなどを利用したオンライン診療もさらに利用が広がると思います。しかし、現在の技術では実際に患者さんと対面して得られる情報のすべてをオンライン診療に置き換えることは難しく、近くに病院がない場合や感染症などで通院がしづらい時などある程度利用を限定しなければ、大きな病気が見逃される危険性もあります。医療DXが進んでも医療機関へ足を運んで、かかりつけ医との対面診療を受けるようにしてください。
担当医
牟田内科クリニック 理事長・院長
牟田 浩実(むた ひろみ)先生
協力:福岡市医師会