痛みの診療所ペインクリニックを知っていますか?
わが国で60年近い歴史があるにもかかわらず「痛み」を専門に扱うペインクリニックについて、あまりなじみがないという人がいます。血液検査は検査機器によって数値化できますし、エックス線写真でも骨折している部位がはっきり撮影できます。しかし、痛みは違います。患者さんによって感じ方が違います。診療する医師との間にも認識の差が生じることすらあります。その様に複雑化し、治療が難しくなった痛みを多角的なアプローチで治療する総合診療科がペインクリニックなのです。
高齢化が進み多くの人は、体のあらゆる部位に痛みを抱えて生活をしていると言っても過言ではありませんが、痛みを我慢して悪い状態を長引かせてはいけません。日常動作や活動意欲が低下し、行動範囲が狭くなり心の病に発展することだってあるのです。
例えば急性の痛みとして知られる急性腰痛症いわゆる「ぎっくり腰」には、局所麻酔注射による神経ブロック療法と痛み止めとして処方する消炎鎮痛剤が治癒力の高い若い人には効果的です。クリニックを出るころには痛みを全く感じない人もいるほどです。
逆にシニア層に多い慢性化する痛みは神経による痛みが多いのが特徴です。帯状疱疹やヘルニアによる手足の痛みは神経の痛みです。私も麻酔科の医師でもありますから、神経や神経の周辺に局所麻酔薬を注射して痛みを遮断することはできます。しかし、それは一時的なもので麻酔が切れると痛みが再発する例が多くあります。そのため、私のクリニックでは患者さんの証(状態)に合った漢方薬を使って本来あるべき身体のバランスに戻してから、適切なタイミングを見極めて局所麻酔薬の注射をする神経ブロック療法を効果的に行うようにしています。
異常を知らせる警告信号は簡単に消えては困りますし、痛みは体の異常を知らせる警告信号なので簡単に消えないようにできています。ただ警告信号の役割でなくなった痛みを気にならない程度に「折り合い」をつけて、普通の生活を送ることはできるのです。長く診察を受けているのに痛みが続いている。そんな人はかかっている診療科の医師と相談するなどして、少しでも早くペインクリニックに行ってください。
担当医
はかたペインクリニック外科・麻酔科
院長
福岡市博多区医師会会長
安田 哲二郎(やすだてつじろう)先生
協力:福岡市医師会