映画『スノー・ロワイヤル』 PG12
監督:ハンス・ペテル・モランド
出演:リーアム・ニーソン、トム・ベイトマン、トム・ジャクソン、エミー・ロッサム、ジュリア・ジョーンズ、ローラ・ダーン 他
配給:KADOKAWA
◎6月7日(金)より中洲大洋、ユナイテッド・シネマ 福岡ももち、イオンシネマ福岡、TOHOシネマズ福津他にて全国ロードショー
ブラックユーモアあり!?ドラマチック・スリラー
リーアム・ニーソンといえば、大ヒット映画『96時間』で演じた、娘をさらわれ復讐に出る父親を思い浮かべる人が多いのではないだろうか。その“最強復讐親父”の固定観念を覆してしまう最新作『スノー・ロワイヤル』が日本でまもなく公開される。
主人公は、小さな田舎町で模範市民賞を受賞したばかりの除雪作業員ネルズ・コックスマン。人違いで一人息子を地元のギャングに殺されたことから人生が一変、復讐劇が始まる。ここで特筆すべきは、“リーアムは今作で、過去には見せたことのない姿を見せる”ということ。「主人公は図らずもパンドラの箱を開けてしまう」と話すのは主演のリーアム。「私が演じるネルズは息子の仇を討とうとしていたに過ぎず、ことの重大さに気づいていない。たった一人の男を追うつもりが、事態は復讐とバイオレンスが渦巻くとてつもない状況にエスカレートしていく。そして想像しにくいかもしれないけど、物語全体にそこはかとないダークなユーモアが漂っているんだ」。勘違いが勘違いを呼び、収拾も予測もつかない方向へ発展するのだが、そこに巻き込まれる2つのマフィアや警察もどこか癖のある者ばかり。登場する個々人の行為は真剣であっても、物語が進むにつれ内側から可笑しみが滲み出てくる。この映画を観て初めて味わう感覚だ。
驚異的な自然と現実が見え隠れする物語
舞台は、ロッキー山脈のキーホーというスキー・リゾート地。撮影で目にした絶景についてリーアムは「大自然にはいつも驚かされるね。これでは映画を観にくる観客は私の顔を他所に、何十億年という年月をかけて形成された後ろの山々に目を奪われてしまいそうだと撮影中何度も思ったよ」としみじみ。しかし、実際に撮影が行われたカナダの標高2千フィートある山はリゾート地どころではなく、突然猛吹雪に襲われることも度々あったとか。「毎日山へ行くのは素晴らしい体験だったけど、一日の撮影を終え、下山する度にほっとしたものだよ」と話すほど過酷を極める撮影現場だったようだ。それでもスクリーンに映る雄大な自然は登場人物の一人といっても過言ではなく、今作に相応しく壮麗で力強い雰囲気を醸し出している。
リーアムのテンションを特に上げたのは、巨大な除雪車を3台操縦したこと。扮するネルズは、人の身長をはるかに超える積雪から町が閉ざされるのを防ぐため、毎日除雪車に乗って道を開通させる。「運転席に座って操縦していると、機械のパワーが下から直に伝わってくるんだ。何せ大量の雪を飲み込んで50メートル先まで吐き出すことができるからね!」日本、ましては福岡では馴染みのない除雪作業のシーンは、思わず「すごい」と声を漏らしてしまいそうな光景だ。
物語は他にも親子関係の複雑さや歴史に根付く民族差別など現実に考えさせられる問題にも触れる。スリルあるアクションをはじめ、コメディ、サスペンスなど異なるジャンルが共存する今作は、一見現実とかけ離れた世界のようで、私たちの人生でも起こり得る復讐の無益さを描いているのかもしれない。