ベーシストの枠に収まらない才能を発揮する渾身のソロ作品
ジャコ・パストリアスはウェザーリポートのベーシストとして招かれて以来、既成概念に捉われないベースの可能性を追求し、グループの作品に多大な影響を及ぼしてきた。ソロ作「ジャコ・パストリアスの肖像」発表以降は、さまざまな楽器によるアンサンブルの微妙な表現を追求し、約半年にわたって米国各地で収録活動を行って発表したのが本作である。
冒頭の「クライシス」は、ジャコが弾くベーストラックを聴いた上で各楽器が自己のパートを録音し、それをオーバーダビングにより重ね合わせたパワフルな演奏となっている。またバッハによる練習曲を元に展開する「クロマティック・ファンタジー」やビートルズの「ブラックバード」など題材も多彩でトゥーツ・シールマンスのハーモニカも効果的なメロディを奏でる。ウェザーリポートでも演奏した彼の作曲「スリー・ヴューズ・オブ・ア・シークレット」はビッグバンド曲として再編されてさらに輝きを増しているのだ。編曲者としての才能を発揮するとともに、これを名作たらしめる演奏参加アーティストも当時の音楽シーンを代表する豪華メンバーなのである。
この作品はワーナーミュージック・ダイレクトからフュージョン・アナログ・プレミアム・コレクションとしてLPがリリースされている。!
相川 潔
元広告会社社員・長崎市生まれ熊本市在住。
ジャズ、ロック、ソウルなどのレコードを追い求めて数十年。名盤、奇盤多数。
レコードは盤、ジャケット、再生機を含めて楽しむべき芸術だと思います。