12月24日(木)~2月7日(日)
まぁ可愛い! でもよく見ると…? 空想と現実の間を自由に行きかう絵
きれいは汚い、汚いはきれい。シェークスピアの悲劇『マクベス』の冒頭で登場する3人の魔女のセリフです。夢か現(うつつ)か判然としない世界に、何故かしら私たちは興味を抱きます。
そんな不思議な絵画の作者がヒグチユウコです。東京を中心に幅広く活動してきた彼女にとって、初めての全国巡回となる今回の展覧会のテーマは「サーカス」です。上に記載した絵『Circus』は、町を巡業するサーカス団の賑やかなジンタが聞こえてきそうです。テントに風船、玉乗りをする猫、有象無象(うぞうむぞう)の一団は、どういう訳か魚の上に乗っています。
超人的な技を披露する傍らで、道化師が笑いと涙を誘うサーカス。楽しいけれども、もの悲しさも漂います。大ヒットした映画『グレイテスト・ショーマン』では、外見から受ける周囲の差別と偏見に闘う人々が描かれました。作風を象徴するとともに、多様性を考える上でも今日的なテーマです。
絵本作家としてのデビュー作は、2014年の『ふたりのねこ』でした。ハグしている猫の姿からは、ほのぼのとした暖かみが伝わってきます。今回は、これまでに出版した絵本の原画も勢ぞろいします。
こうした絵のベースは細密なペン画です。16世紀のオランダの画家・ブリューゲルのバベルの塔や、奇想の絵師・伊藤若冲の雄鶏図をアレンジした作品もあり、画家としての確かな描写力も魅力的です。濃密なペン画に淡い水彩が、可愛い奇妙さを醸し出します。
福岡での展覧会は、年末年始にかかるため、ポスターに『七福神』を採用しました。猫やひとつめといったヒグチ作品お馴染みのキャラクターが、七福神に扮しています。“お目出たい年始に”との意図が、心和ませてくれます。
白か黒か、デジタル全盛の時代に、曖昧な不思議さを味わってみてはいかがでしょうか。
ヒグチユウコ《Circus》2018年 ⒸYuko Higuchi
ヒグチユウコ《「ふたりのねこ」23ページ原画》2014年
ⒸYuko Higuchi
※入場には日時指定チケット(事前予約)が必要です。事前に下記WEBサイト『アルトネ』のチケットページから申し込んでください。
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繁竹治顕
元NHK記者。’93年全米オープンゴルフ、’94年リレハンメル冬季五輪、2000年シドニー五輪などを取材。福岡放送局広報事業部長、副局長。現在、九州国立博物館振興財団専務理事。西南学院大学非常勤講師(ジャーナリズム)
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■九州国立博物館
文化交流展:特集展示 織物に魅せられて ‐加賀前田家伝来の名物裂‐
「鴻池家伝来裂箪笥」
箪笥:江戸時代 19世紀
裂:13~16世紀 個人蔵
12月1日(火)~1月24日(日)
●一般 700円
●大学生 350円
●高校生以下・18歳未満および
満70歳以上無料
休館日/月曜、12月24日(木)~31日
(木)(ただし1月11日(月祝)は開館、
12日(火)は休館)
☎050・5542・8600(ハローダイヤル)