「ラーメン キラメキ。」
福岡県小郡市小郡553-7
11:00~22:00(平日は15:00~18:00中休み)水曜定休
◎豚キラメキラーメン590円、特製塩ラーメン750円
「迷わせようと作っているわけじゃないんですけどね」。店主の中津留隆章さん(45)は不敵な笑みを浮かべる。そうは言っても『ラーメン キラメキ。』に入店し、食券機を前にすると迷ってしまう。基本は豚骨。鶏醤油、鶏白湯もあり、期間限定でざるや塩まで並ぶ。さんざん迷って、この日は特製塩ラーメンを選んだ。
食券を渡して調理開始、かと思いきや、またまた悩ましい選択が待ち構えていた。まずストレート、全粒粉入り、縮れの3タイプの麺がある。仕上げ油は鶏、煮干し、ホタテを用意。さらにチャーシュー3種から2つを選べる。迷った末、ストレート麺、煮干し油、豚肩ロースと鶏ムネに決めた。
配膳されたのは透き通ったスープが印象的な一杯だ。一口すすると煮干しの風味が鼻を抜ける。続いて、さらりとした舌触りの鶏だしが柔らかく口に広がる。京都の「麺屋棣鄂」から取り寄せる麺もいい。つるっとしつつ歯ごたえがあるし、長目ですすりがいがある。
多彩なメニューを、しかもかなりのレベルで出す中津留さん。この道のベテランかと思いきや、ラーメン業界と関わったことすらないというから驚く。長く運送業に従事していた。30代中頃「アイデアで勝負できる仕事がしたい」と思い立ち、好物だったラーメンに人生を賭けた。
トラックの仕事をこなしつつ、独学で試行錯誤した。最初は豚骨のみを考えていたが、徐々に変わってくる。鶏料理屋を手伝い鶏スープの面白さを知った。関東、関西で食べ歩いて研究を重ねた。
オープンは平成29年6月。完成したのは豚骨と鶏ガラを7対3の割合で使ったスープだ。豚骨のうま味を鶏のまろやかさが包み、元ダレがそれを支える。麺は加水率低めの「久留米製麺」のものを使う。何を食べるかに悩むのはこの看板メニューが美味しいからでもある。
豚骨を軸にしつつ、「豚骨がダメな人にも来てもらいたい」と鶏のみの醤油ラーメンを初めからメニューに入れていたのも中津留さんらしい。開店半年後には限定麺を創り始めている。鶏白湯、つけ麺、牛肉冷やしラーメン、豚清湯と次々に商品化。「器の中でいかに表現できるのか、たえず考えています」。まさにアイデア勝負の仕事を実践している。
ラーメン屋にもいろいろなタイプがある。若干の緊張感を持ちつつカウンター席で味わう店があれば、もっとリラックスして楽しめる店もある。どちらが良い悪いではないが、「キラメキ。」は後者だと思う。塩ラーメンで、麺、仕上げ油、チャーシューを食べ手に選択させるのはそのことを象徴している。「僕は職人タイプではない。独りよがりにならないようにしています」と中津留さん。その言葉が具現するかのように、店内では家族連れが美味しそうに麺をすすっていた。
「従業員もいるので楽しさより、
責任の方が大きい」と語る中津留隆章さん
文・写真 小川祥平
1977年生まれ。西日本新聞社文化部記者。著書に「ラーメン記者、九州をすする!」。KBCラジオ「小林徹夫のアサデス。ラジオ」内コーナーで毎月1回ラーメンを語っている。