加齢や病気などによる機能の衰えにより、うまく食べられない、飲み込めない状態を嚥下(えんげ)障害といいます。症状は食事が喉を通りにくい、食事に時間がかかる、食事中に疲れるなどです。
原因は、喉の筋肉が衰えたり、感覚が低下したりすることで正常な嚥下運動ができなくなって起こります。これにより食べ物が食道、胃ではなく誤って気管に入る「誤嚥(ごえん)」が生じ、肺炎につながるのです。
高齢者はこの誤嚥性肺炎になったり、発熱を繰り返したり、ご飯が食べられずに体重が減ったりする場合もあります。自分の唾液を飲み込めないことで、夜間に咳が多くなることも。年配の男性は喉頭が下がるため、一般的に高齢男性がなりやすいといわれています。
嚥下障害が病気を引き起こすというよりも、何かの病気があって嚥下障害になることが多いと考えてください。脳梗塞、脳出血、口の中のがん、喉のがんなどによって起こりやすくなります。
検査法は二つあります。一つは嚥下内視鏡検査。鼻から細いカメラを入れ、色のついた水を通し、飲み込めているかを見ます。より専門的な方法が嚥下造影検査です。バリウムが入った食物や水を摂取し、横からエックス線をあてて調べます。
肺炎のある人はまず肺炎の治療から始め、飲み込む機能が低下している場合は喉の筋肉を鍛えるリハビリテーションを実施。食べやすい食事形態を指導することもあります。気になる症状があれば耳鼻科で検査を。肺炎予防のためには口腔ケアが大切です。きれいな唾液だと誤嚥しても肺炎になりにくくなります。
嚥下障害を防ぐためには、日頃からしっかり声を出して、喉の筋肉を鍛えておくことでしょう。また、自分で歩ける人ほど嚥下障害を起こすことが少ないともいわれています。普段から、運動することを心掛けてみてください。
担当医
福岡歯科大学 総合医学講座 耳鼻咽喉科学分野
教授 山野貴史先生
協力:福岡市医師会