突然なり得る大人の喘息
担当医 国立病院機構福岡病院
センター長 岩永 知秋先生
病原体の感染に起因する気管支炎や肺炎に対し、喘息は特殊な炎症。気管支の粘膜に白血球の一種である好酸球が集まって炎症になり、気管支の筋肉が収縮したり、痰が増えたりするのです。咳や痰がでる点では気管支炎や肺炎と似ていますが、喘息だけで熱がでることはありません。典型的な症状としては息がゼーゼーなる喘鳴がありますよね。しかしこの症状は子供に多く、大人は咳だけのことが多いため気づきにくい傾向にあります。さらに喘息の原因はアレルギー性とそうでないものがあるのですが、大人になるとアレルギーとの関連が低くなり、喘息に突然なることもあります。そのためもし咳が長引く場合は、風邪だと決めつけずひどくなる前に病院へ行きましょう。
20~30年までは喘息で亡くなる方が年間6千人程を数えました。しかし今は医療が進み、1/4程まで減少していますが、その内65歳以上が多くを占めています。喘息死が減った大きな理由は、吸入ステロイド薬の登場です。ただステロイド薬は炎症に対する効果が強いのですが、飲み薬や注射で長く使うと副作用が問題になります。そこで現在は、気管支の炎症に直接届く吸入薬が使われているのです。これなら飲み薬の1/10以下とわずかな量で効き、血液への吸収もわずかなため全身的な副作用はほぼありません。さらに長時間作用性のある気管支拡張薬を配合するなど、より使いやすい薬も普及しています。
喘息の治療は、良くするというよりコントロールすることが大切。症状が治まっても気管支の粘膜に炎症が残るため、吸入ステロイド薬による治療を長く続けることが大事なのです。できるだけ喘息にならないようにするには、まず喫煙をしない。そして喫煙環境から身を守ることがあげられます。アルコールで誘発される喘息も多いので、飲酒で発作を経験した人は飲酒も避けた方が良いでしょう。健康的な生活を心がけることが一番です。
協力:福岡市医師会