
「在宅医療」をご存じですか?医師が患者の自宅を訪問して診察することです。入院医療、外来医療に次ぐ「第三の治療」として広がっています。
医師や看護師、ケアマネジャー、ホームヘルパー、薬剤師などさまざまな職種の人たちが協力して患者さんを診ています。医師の訪問診療は月に1~2回、定期的に患者宅を訪れ、診察します。患者や家族の求めに応じて突発的に訪問する「往診」とは違うので注意してください。
当クリニックは開業以来 年間、訪問診療を行っています。最初は十数人でしたが、現在は百人近くおられ、私と専属の医師2人で診ています。対象者は「自宅療養中で通院が困難な方」です。
在宅医療の長所は、住み慣れた環境で治療を受けられることです。一方、短所は家族などの負担が増えることでしょう。容体が悪化したときの対応をはじめ、大きな機械を使う検査などはできません。在宅医療を選ぶ場合、こうした事情を理解した上で、患者と家族が意思統一を図っておくことが必要です。
厚生労働省によると、終戦直後は自宅で亡くなる人が8割以上いて、病院死は1割弱でした。戦後は病院で亡くなる人が増え、2000年には8割を突破、現在も7割の人が「人生の最期は自宅で」と考えているそうです。
こうした社会のニーズに応える制度が在宅医療です。超高齢社会が到来し、将来亡くなる人がさらに増えます。一方、国は医療費を抑制するため、病床数の削減を進めています。こうしたことから、在宅医療が広がって行くのは確実と思われます。
在宅医療を円滑に行うには、医療や介護の悩みを本人や家族だけで抱え込まず、前述したさまざまな職種の協力と支援を仰ぐことが不可欠です。家族の介護疲れを癒やすため、患者本人がレスパイト入院(2週間以内の短期入院)や介護施設でのショートステイなどを利用できる環境整備を進めてゆかねばなりません。
在宅医療を希望する場合、まず、かかりつけ医やケアマネジャーに相談してください。福岡市医師会では訪問診療を行う医療機関をホームページ上で紹介しています。
協力:福岡市医師会

担当医
きむらしろうクリニック院長
木村史郎先生