「ロボット支援下手術」とは、医師がロボットを操作して行う手術のことです。ロボットが単独で手術を行うのではなく、医療用のロボットシステムが医師の行う手術をサポートする仕組みです。前立腺がんなど泌尿器科のがん手術で始まり、外科、婦人科などの分野でも利用されるようになりました。当院では、2023年1月から実施され、毎月20件ほど行われています。
医師が「コンソール」と呼ばれる操作台に座り、患者側に設置されたロボットアームを遠隔操作して手術を行います。アームにはカメラや電気メスなどの手術器具が取り付けられ、医師は3Dカメラを通じて、患者の体内の立体的な映像を観察しながら操作します。
ロボットアームが医師の手の動きを正確かつ細やかに再現して手術を行います。人間の手よりも多関節で自由に動かせる鉗子などの器具を使用するため、狭い場所や複雑な部位でも精密な手術を行うことができます。
ロボット支援下手術には、次のようなメリットがあります。
①精密な手術。3D映像とロボットアームの手振れ防止機能や高い自由度により、非常に精密な操作によって正確な切除が可能になります。
②出血量が少ない。ロボットアームの精密な操作や局所の拡大視効果で出血を最小限に抑えることができます。
③傷口が小さい。小さな切開で手術を行うため、術後の痛みも少なく、患者は早期に退院することができます。
ただし、医療用ロボットシステムの導入費は高額なため、現時点ではすべての手術に行えるものではありません。当院では、保険適用である大腸がん、胃がん、肺がん、縦隔腫瘍、子宮、卵巣腫瘍(良性、悪性)を行っており、今後は肝臓がん、食道がんなどにも広げる計画です。将来的にはより多くの疾患に対してロボット支援下手術が可能になることが期待されています。
ロボット支援下手術は、このように患者の体への負担を軽減し、術後の回復を早めることができる革新的な手術方法です。医療技術の進歩とともに、さらに多くの分野での応用、発展が期待されています。
協力:福岡市医師会
担当医
済生会福岡総合病院 院長
松浦 弘先生