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長谷川法世のはかた宣言89・一茶の家

長谷川法世のはかた宣言89・一茶の家


我と来て遊べや親のない雀

 小林一茶は宝暦13年(1763)北信濃の柏原村に生まれた。数え3歳のとき実母が亡くなった。我と来て…の句は、一茶の句文集『おらが春』に6歳弥太郎の作※1であるとして書かれている。弥太郎は一茶の本名だ。

 その後8歳の時に継母がきて、2年後継母に弟弥兵衛が生まれると、継母との仲がうまくいかなくなったという。

 まゝつ子や灰にイロハの寒ならい

 これは60歳の句。人別(戸籍)では百姓弥太郎である一茶は、文政10年(1827)11月、65歳の生涯を実家の土蔵※2で終えた。故郷の柏原宿が大火となり、焼け残ったのは土蔵だけだった。火事のまえ13年間は、実家を真半分にして継母・異母弟家族と住みわけていた。12年間も継母・異母弟と遺産相続で争った末に獲得した終の棲家だった。帰郷のまえ36年間は15歳で奉公に出て以来江戸暮らしだった。

 一茶の故郷柏原村には北国街道(ほっこくかいどう)※3が貫通していて、柏原宿があった(村と宿の違いに注意)。高橋敏著『一茶の相続争い』※4は「全長一キロに満たない宿場の両側に所狭しと家屋が密集・並立している」と書く。正確には全長483間(約875m)で、一茶の没した文政10年には全119戸だったという。   

 柏原宿がどんなだったか、一戸平均の間口でかんがえてみよう。119戸は街道の両側に「密集・並列」していたので、片側は半分の59.5戸だ。すると柏原宿の一戸平均の間口は、483÷59.5=8.117間となる(単純計算であることに注意)。

 記録によれば一茶の実家は、間口9間5寸・奥行23間だった。12年の係争の末に一茶が遺産相続で手にしたのはその真半分、間口4間3尺2寸5分(ジョークのような数字だが記録どおり)で、奥行は23間。まさにうなぎの寝床型敷地だった。

 うなぎの寝床といえば集住地域の特徴で、博多町家もおんなじだ(やっとはかた宣言になった)。農家は田畑の広さで税が決まるが、商家は間口の広さで税額が決められた。間口が広いと税が多く、狭いと税は少ない。

 一茶の相続した家はしかし、博多からみるととても「密集・並列」の家屋にはみえない。平成2年の福岡市教育委員会の市内の町家調査では、博多※5の町家の85%が間口2間から3間と報告されている。調査リストにある72棟のうち間口の広い家は5.5間が最大で1棟だけだ。柏原宿の平均8.112間とは驚くべき差ではないか。驚きのあまりつづく

※1)6歳弥太郎の作…俳句で自分のことを書くのは珍しい。私小説ならぬ私俳句か。『成美評句稿』では8歳作と書いているらしい。凡人の自分でも初めての句作は小学5年のキャンプのとき、「大空やトンボ飛びかうキャンプ場」と作った。ゲームで俳句をつくれと言われて3秒でできたと思う。一茶なら6歳でも作ったとしておかしくはないだろう。6年のときには国語の俳句・短歌の授業で「池の鯉冷たき水に影映すわらべのそばに寄せて集まる」と作った。最初は俳句を作ったが「冷たき水」が季語かどうかわからなかったので下の句をつけて短歌にした。(つい自慢たらしく書いてしまった。自戒)
※2)土蔵…文化10年(1813)遺産分割のとき仏壇とともに金三分で一茶が買い取った。
※3)北国街道…中山道追分宿と北陸道出雲埼を結ぶ塩の道。佐渡金山にもつながる要路。
※4)『一茶の相続争い』…副題「北国街道柏原宿訴訟始末」岩波新書
※5)はかた宣言の博多は太閤町割り以来の博多。最近は博多旧市街ともよぶが当面は単に博多とする。

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